Tricksters
127
部屋に入れば、ベッドにそっと倒される。白いシーツと青い掛け布団のコントラストが眩しい。緩やかな口付けが始まると、寧はゆっくりと目を閉じた。
――和洋の唇が、自分の唇や素肌を優しく食(は)む。その愛撫で、柔らかい羽毛に撫でられているような気分になる。服を脱がされると、指や舌先が丹念に性感帯へ触れてくる。ずっとずっと、こうされていたいと思った。
「……ねぇ、もっと声出して良いんだよ?」
長い指先が濡れた下着を下ろし、入り口を浅く行き来する。かと思えば、ゆっくりと奥まで侵入してきて、中をグチャリと音を立ててかき回す。それは、先程中途半端な形で終わってしまったため、無意識的に待ち望んでいた行為。堪らず甘美な声を上げた寧に、和洋の唇が弧を描いた。
「寧ちゃんって、ここ好きでしょ?ほら。」
「あッ……!ちょっと、勝手に分析しないでよ!」
「何言ってんの、喜んでるクセに。じゃあ、これは?」
「っ……!だから、聞かないでっ!」
「ふーん……生意気な子ってそそるよね。俺、嫌いじゃないよ。」
頭上の和洋が、グレーの瞳を細めて含み笑いをする。その妖しい視線に、眩暈を覚えた。
和洋は、思いが通じ合った上で初めてやっと繋がれるというのに素直にならない寧を、少々いたぶりたくなったらしい。彼の赤い唇を、その艶(なまめ)かしい舌が舐める。脚の間が、甘く疼いた。
蜜が絡み付いた指を引き抜いてペロリと舐めた後、おもむろに寧の太股をいやらしい手付きで撫で回し始めた和洋。今まで執拗にいじられていた肝心な部分には触れてもらえない。これではまるで、主人の“待て”の命令でお預けを食らっている犬のようだ。
「やっ……何でよぉっ……」
「だから、素直にイイって言いなよって言ったじゃん。
……ね、言ってよ。俺しか聞いてないから。」
優しい口調と表情になった和洋の指が、蜜壺の入り口をなぞり、再び中に入ってくる。その瞳が何処か寂しそうで、寧はふと思った。
もしかして、彼も自分と同じ気持ちなのだろうか。“夢を見ているのではないか”と、そう感じているのだろうか。現実味がまだないから、不安になって尋ねずにはいられないのかもしれない、と。
「ヤス君……」
「……ん?」
「夢じゃ、ないよね、これ……私、ヤス君の彼女で良いんだよ、ね……?」
大きく目を見開いた和洋。直後、二つの瞳が少しだけ潤みを増す。
「……うん。そうだよ。」
噛み締めるように言って、微笑する灰色の瞳。ゆっくりと背中に手を回したら、存在を確かめ合うような愛撫が始まった。
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