Tricksters
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「俺の家、来る?」

「え……?」

「ここじゃ何となく抵抗あるでしょ。バレないように車回してくるから、裏口で待ってて。」



 乱れた寧の着衣を直してやると、和洋は荷物を持って部屋を出た。寧は暫く動けずに居たが、やがて和洋の言った意味を理解し、頬に手を当てる。



「い、家って……!何にも心の準備出来てないのに!!
……あ、そうか。場所が悪いから気を使ってくれたのね……」



 一人舞い上がっていた自分が恥ずかしくなり、小さく溜め息をつく。だが、彼に家へ招かれるということはとても嬉しかった。



「……私、彼女で良いんだ……」



 和洋自身、人気アイドルということで言わずもがな雑誌にあれこれ書かれてしまう。それなのに、ある種敵でもある自分を恋人に選んでくれたのだ。マスコミの執念深さは身を持って知っている寧だから、喜びも大きかっただろう。

 取材用ノートなどを鞄にしまい、部屋を出る。エレベーターで下まで行って和洋に指定された場所に向かうと、紺の小型自動車が一台止まっていた。レトロなクラシックカーのデザインで、一見すると女の子が乗っていそうな雰囲気だ。寧が運転席を覗けば、金髪に灰眼の青年がニコリと笑み、“乗って”のジェスチャーをしてくれた。


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あきゅろす。
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