Tricksters

 翌日の午後2時40分頃。寧はTrickstersが所属する、ベリーズエンターテイメントのビルにある第2談話室で二人を待っていた。

 初対面ということで、印象付けが大事だ。寧は入念に身だしなみを整え、スタッフに出された紅茶を飲みながら緊張した面持ちで待機していた。



「はぁ……最近の芸能事務所はかなり警戒してるみたいだし、リラックスした会話は出来ないかもなぁ……」



 寧は呟いて、周りをキョロキョロと見回した。監視カメラを確認するためだ。すると、とある一角に小型の監視カメラを発見した。やっぱり……と、寧は心の中で思った。それに気付いていないかのように装い、手帳を取り出してインタビューの確認をしている振りをした。これではゴシップ情報が手に入らない……と内心思った寧。何を隠そう、彼女の本業はゴシップ記者なのである。

 なりたくてそうなった訳ではない。彼女は純粋に“取材”がしたくて雑誌編集者になったのだ。しかし、星彩社に受かったのが運命を分けたのである。

 星彩社の雑誌『クロス』のスタンスは“オシャレな芸能雑誌”だ。が、それはあくまで表向き。『クロス』の記者はゴシップ雑誌『flash』の記者も兼ねており、『クロス』では純粋な芸能人達への取材の内容と写真を、『flash』では恋愛沙汰などのゴシップを掲載するのである。

 入社するまで、社員達はそれを一切知らされることはない。だから寧も驚いたのだ。しかも、重要なのはゴシップ情報をどれだけ集められるかということなので、一時期は相当落胆したのである。

 ――今では仕方ないと割り切っている。収入も、ゴシップ記事の方が確かに多いのだ。芸能人達には申し訳ないと思いながらも、寧は日々ゴシップに目を光らせているのだった。


[*back][next#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!