Tricksters

「――はい。ええ、お待ちしております。ええ、では明日の午後3時に、こちらの第2談話室で。はい……はい、よろしくお願いします。」



 ピッ、と電話を切ったマネージャーに、和洋と希楽は即座に質問を開始した。



「……工藤さん。今のってこの前話してくれた記者の人だよね?」



 和洋が尋ねると、工藤マネージャーはコクンと頷いた。



「あぁ、そうだよ。雑誌の取材ってことになってるけど……二人共、気を付けろよ。滅多なことを口にすると、あっという間にゴシップ記者に情報流されるんだから。僕が口を酸っぱくして注意してきたから分かってると思うけどね。」

「分かってるよ工藤さん。最近はファンの中にも、知り合いのゴシップ記者に情報流してる子が居るらしいしね。あと、工藤さんの前のマネージャー?あいつも俺らの情報流してやがったから解雇されたんだよ。」



 希楽が苦笑しながら言うと、工藤は分かったという風に目を伏せる。そして、優しい表情で言った。



「僕は君達二人を全力で守るように言われてるけど、プライベートまで干渉したくはないんだ。芸能人はただでさえ周りから注目されて神経も張りつめてる。せめて私生活くらいは自由にさせてやりたいんだよ。
……辛いこともあると思う。前のマネージャーには言えなかった不満や愚痴なんかも、僕には隠さず言って欲しいんだ。君達は芸能人だけど、その前に普通の人間なんだから……」



 和洋と希楽は、深く頷いた。以前のマネージャーのこともあって半ば人間不信に陥っていた彼らだが、工藤の言葉には胸を打たれた。

 実は、工藤自身も芸能活動の経験があるのだ。昔ありもしないゴシップ記事を書かれて芸能界を追放され、今度はそんな輩からタレント達を守る側につくことに決めたのである。その事情を知っている二人は、工藤をとても心強い味方に感じているのだ。


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あきゅろす。
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