COLORFAST DAYS
朝の一コマ
──春。真新しい制服に身を包み、いつものように食卓に向かった。席に着くと父親が既に食卓に居て、新聞を読みながら食後のコーヒーをすすっていた。
「……おはよ。そんなんしてたらコーヒーこぼすぞ?」
俺の言葉に奴は、活字を追っていた目をチラリとこちらへ向けた。俺そっくりのその両目は、人の心を探るようにジッと俺を見つめている。
「……お前も今日から高校生かぁ。何か変な感じだな。な、涼?」
父は言いながら、台所に居る母へ声をかけた。
「えー、そう?まぁ、確かに早かったよね!高校生かぁ……何だか懐かしいね。」
声がしたかと思うと、母親が俺の分の朝食をテーブルに運んできてくれた。
「ありがと。今更だけどさ、母さんこいつの何処が良いの?俺、全然分かんないんだけど…」
俺が尋ねると母さんは苦笑し、目の前に居た父さんは眉間に皺を寄せた。
「……お前、しばくぞ?お互いが良いと思ったから結婚したんだろうが!!」
「あー、はいはい。すいませんね。母さん、いただきます。」
厄介な争いに巻き込まれそうだったので、俺は手を合わせてから箸を取った。
黙々とご飯を口に運ぶ俺に、父さんはまだ文句を言っている。そんな父さんをやんわりとなだめるのが、母さんの特技だ。
小さい頃からこんな光景を見てきたから、二人の仲の良さは十二分に分かる。
「ほら、いつまでも文句言わないの!朱希はそろそろ出勤時間!!今日の夕飯はオムライスにしてあげるから!!!」
「……おい、ガキ扱いすんなよ。襲うぞ?」
「なっ……朝から変なこと言わないでよ!!紫温に悪影響でしょ!?」
顔を真っ赤にしている母さんを見て、父さんはニヤニヤと楽しそうに笑っている。この光景も、随分見飽きた。
「……良いよ母さん。既に影響受けてるから。」
俺が呟くと、母さんはガックリと肩を落とした。
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