COLORFAST DAYS
そのままの君で
「紫温ー!休憩終わりだぞ!!早く来いよー!!」

勇流先輩の声でハッと我に返った。俺はくるりと声のした方へ向くと、「はい!今行きます!!」と告げてすぐにそちらへ走った。















──部活も終わり、片付けと更衣を済ませた俺は、一人校門を出た。毎日クタクタになってでも部活を頑張るのは、やっぱり剣道が好きだからだ。

父さんには「背ぇ高いんだからバスケでもいけるのになぁ…」と言われたが、球技大会だけでもうごめんだ。体育の授業でだって、十分楽しめているのだから。

暮れかかる通学路を下校していると、後ろから不意に声をかけられた。



「……紫温!良かったら途中まで一緒に帰らない?」


振り向くと、いつも通りの仏頂面の茉莉が居た。こいつの辞書には愛想笑いとか機嫌を取るだとか、そういう類いの言葉はないんだろうな……と思ってしまう。

だから少しだけ、からかってみたくなった。










「良いけど……お前、俺と帰って楽しいの?」



「……え?」



「だって、いつも無表情じゃん。顔作れとは言わないけどさ……レオと居る時は楽しそうなのになぁって、たまに思うんだよね。」

俺が言うと茉莉は、「そ、それは…っ」と言って俯いてしまった。困ってる、困ってる。楽しいと思ってしまって、少しだけ申し訳なかった。





「……まぁ、別に良いんけど。ただ、いつも一緒に居るのに、俺や響にまで無愛想だと何だかなぁーって思っただけだから。帰ろうぜ?」

俺が言うと、茉莉は不安そうに顔を上げた。










「……私、可愛くない、かな…」



「……え?」



「中学校の時にね、好きだった子に言われたことがあるんだ。『お前無愛想だから、顔が良くても可愛くねぇな!』って。愛想振り撒くのなんて苦手だし……レオみたいに可愛くなれたら良いんだけどね…」



そう言って苦笑する茉莉に、少しだけ胸が痛んだ。悪いことをしてしまったかも知れない。だから“ごめん”の意を込めて、伝えた。















「……別に良いよ、そのままで。俺だって愛想振り撒く奴苦手だし。だから、あんま深く考えんなよ?」



俺の言葉に一瞬驚いた顔を見せた後、彼女はそっと頷いた。その顔は、いつもより幾分柔らかかった。





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