COLORFAST DAYS
練習風景
──…一通りの準備運動を終えると、部員が男子と女子に分かれ、試合形式の練習が始まった。

俺は服装を整えると、いつもペアで稽古をしている、キャプテンで3年の勇流先輩の元へ向かった。





「先輩、今日も宜しくお願いします!」



「おう、宜しくな。紫温はいつも礼儀正しくて良いなぁ!おい、他の1年も見習えよ!!」

勇流先輩がそう言って俺の肩を叩いたので、俺は部員全員から注目を浴びることになってしまった。





「……先輩、やめて下さいよ…」

「あー、わりぃわりぃ!じゃあ稽古するか?」

「はい!宜しくお願いします!!」



俺の返事が合図となり、二人が向き合って立つ。一定の間隔を隔てた距離には緊張感が漂った。

腰元に据えた竹刀を抜き、構えの姿勢を取る。視線が交わると緊張感が最大になった。

先輩はいつも、俺が動くまで攻撃も防御もしない。こちらが行動するのを待っているのだ。



だから俺は目の前の敵に向かって、前進しながら竹刀を突き出した。





……目指すは小手。










ガチッ!と竹刀が触れ合う音。相手が俺の竹刀をしっかりと捕らえていた。後退して攻撃の隙を窺う。しかし考えるより早く、相手が攻撃を仕掛けてきた。



胴に向かってくる攻撃を竹刀を横にして止める。相手はこちらに攻撃する隙を与えず、あらゆる方向から竹刀を降り下ろしてくる。故に守りの体勢から動けない。相手の竹刀を受け止めるのに精一杯なのだ。





「紫温どうした?攻撃する余裕もないか?」



本来の試合中の私語は厳禁だが、先輩はニヤリと笑って俺を挑発してくる。彼は言葉を発しながらも全く攻撃を休めない。当の俺は話す余裕さえないというのに。





「くそっ…!」



この余裕の差は経験の差だろうか。










……どうしようもなく、苛々する。







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