COLORFAST DAYS
憎めない奴
茉莉は一度見たり聞いたりした英文をなかなか忘れないし、レオは文法問題にはかなり詳しい。
他のクラスメイトの中にも、人前でのスピーチに慣れている奴や既にホームステイの経験がある奴まで居た。
……俺は、少しだけ肩身の狭い思いがした。
「あ、あれって響君じゃない?グランドから手振ってるよ!!」
視力の良いレオが言うと、茉莉はどれどれとそちらに目をやる。
「……ほんとだ。あんなに大袈裟に騒ぐなんて馬鹿みたい…」
呆れて溜め息をつく茉莉の言動に、俺は漸くそちらを向く気になった。授業中からかけっぱなしにしていた眼鏡を、カチャリと直した。
「……アホかあいつは…」
飛び上がって大きく両手を振る響には、思わず呆れてしまった。しかし、何処か憎めない奴なのだ。
「紫温ー!!今日の体育片付け頼まれたから、ちょっと昼飯遅れるからー!!」
「……分かったから、でかい声で叫ぶなよ…」
「あぁ、ごめんごめん!レオちゃんと茉莉ちゃんにも謝っといてー!!」
……笑顔で言うこいつは、やっぱり何処か憎めない。沈んでいた気持ちが、少しだけ穏やかになった。
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