PURPLE DAYS

「――先生おはよ〜!」



 教室に入るなり、わらわらと群がってくる生徒達。自分がこの立場になってみて分かる。あの時俺が描いていた夢は、間違いじゃなかったんだ。



「おう、おはよ。宿題ちゃんとやってきたか?」

「もっちろ〜ん!先生の教え方、超分かりやすいもん!!」

「おい、先生には敬語使えって言ってるだろ?いい加減直せよな。」



 ごめんなさい、と答えてきちんと敬語に切り替える辺り、まだまだこいつらも捨てたもんじゃないな、と思う。分かれば良いんだと返すと、奴らの顔にも笑顔が戻った。



「先生、今度三角比教えて下さいよ!俺どうしても苦手で……」

「ちょっと!私が先に教えてもらうのよ!!」



 何だか知らないが、言い合いを始めた生徒達。廊下を横切ったかつての恩師は、「早川は相変わらず人気者だなぁ」と、完全に傍観者の台詞を口にして去っていく。助ける気など、更々ないらしい。

 と、その時。一人の男子生徒が俺の左手を指差して大きな声を上げる。



「……あれ、先生って結婚してんの!?」



 その途端、女子生徒達の目が俺の手に集中。叫び出す奴や泣き出す奴、そんな奴らの肩をさすりながら慰めの言葉かけている奴など、様々な反応が返ってきた。一体俺にどうしろというのだろう。


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あきゅろす。
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