PURPLE DAYS
80
side朱希



 カーラジオから流れているのは、洋楽ポップス特集。“King of Pop”と謳われるマイケル・ジャクソンや、長い人気を誇るBackstreet Boysを聴きながら、俺は車内に居た。

 さっきまで爆睡してたから、まだ頭が覚醒しきってない。しかも、この眠い時にカーペンターズって結構キツいよな……目を閉じそうになったけど、窓が叩かれる音のお陰で、そうせずに済んだ。



「……誰だ……?」



 目をこすりながら、右側にある“AUTO”のボタンを押した。スーッと開いた窓からは、覗き込むようにしてこちらを見ている涼。

 ――やっと来たのかよ。小さく笑い返したら、微風が二人の髪を揺らしていった。



「おせーよ。また寝そうになったじゃん。」

「ごめんね、遅くなって。」

「……まぁ、良いけど。今日、生徒から“中間テストが難しすぎた”って苦情もらってさ。特別補習してやってたから、結構疲れが来てんだよな。
つーか、誰か居んの?」



 涼の後ろにある人影に気付いて、尋ねる。「うん」と言って後ろを向いた彼女の後ろには、胸を覆うくらいの黒髪をした女の子が居る。



「あのね、友達が朱希に会わせろってうるさくて。岡崎明日美ちゃんだよ。前から何回か話してると思うんだけど。」

「あぁ、そういえば……ん?俺、何かあんたの顔見たことあるような気がするんだけど。」



 大学じゃないよな。高校……でもねぇな。あれ、じゃあ中学か小学校ってことか。思い出せねぇや。

 なかなか答えに辿り着かないことが表情に出ていたのか、涼とその友達がクスクス笑う。しょうがないじゃん、興味ないことは覚えないタチなんだから。不快になったことがまたもや伝わったらしく、涼は「明日美ちゃん、朱希と知り合いなの?」と、さりげなく友達に話を振った。



「うん、そうみたい。早川君は忘れてる感じだけど、私はちゃーんと思い出したよ!
ヒントあげようか?私、早川君と仲良かった麻田正太郎をほぼ毎日追いかけ回してたんだけど……
ほら、あいつっていつも赤点ギリギリなのに、補習サボって逃げようとしてたじゃない?私、三年間あいつと同じクラスだったし学級委員の仕事もしてたから、先生に面倒見るように頼まれてたんだよね。」

「……あ!もしかして、テニス部の岡崎?確か、正太郎の顔面にスマッシュ食らわせてただろ。」

「そうそう!軟式でほんと良かったねって話。
へぇー、涼ちゃんの旦那様って早川君だったんだ!同姓同名かと思ってたけど、本人だったんだね!」



 中学か……涼と会う前だな。あの頃から明るくて元気だった岡崎は、何も変わってない。てっきり正太郎とは付き合ってるのかと思ってたけど、そう言う訳じゃなかったみたいだ。今も特にそういう関係じゃないらしい。久し振りの再会を果たした俺達を、涼は温かい笑みを浮かべて見守っていた。


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