PURPLE DAYS
78
「良いなー、涼ちゃん!私も早く結婚したーい!ていうか、まず男が居ないよ、男が!!」

「これからまだ出会いがあるだろうし、大丈夫だよ!
そういえば、里美ちゃんが『吉村さんが明日美ちゃんに気があるっぽい』って言ってたよ。ほら、この前の環境会議のイベントでパンフレットの翻訳してたチームのリーダー。」

「え、そうなの!?そういえば、この前メアド聞かれて交換したなぁ……ちょっと気になってたし、アタックしてみよっかな!」



 恋バナに花を咲かせている時、ふと携帯に目をやった。チカッ、と光ったブルーのランプ。何か着信があったみたいだ。

 去年の誕生日に慶華からもらったチェリーピンクのマカロンのストラップが付いた、二つ折りの白い携帯を手に取る。画面を開くと、“着信 朱希”の文字があった。



「旦那様から?」

「うん。10分くらい前に来てたみたい……」



 何か用事があったのかなと思って、電話をかけ直す。なかなか出なかったけど、辛抱強く待ったら、ようやく声が聞こえてきた。



「……もしもし……?」



 掠れた声が、寝起きだということを教えてくれた。電話の向こうで眠たそうに目をこすっている朱希が想像出来て、無性におかしくなる。



「もしもし、あたしだけど……さっき、電話出れなくてごめんね?」

「あぁ……別に良いよ。早く着いたから、何してるかなぁって思ってかけてみた。まぁ要するに、ちょっと邪魔してやろうかと思って。」



 クスリという笑い声。その表情まで想像出来てしまうあたしって、凄いような気がする。

 寝ていたことを指摘すると、「あ、バレた?超爆睡してた」と言ってまた笑う。何年も一緒に居るからこそ思い浮かべられるその笑顔に、何だかすぐにでも会いたくなってしまった。


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