PURPLE DAYS
71
「……あの時言ってくれたこと、嘘だったのかよ。」



 漆黒の瞳が厳しさを纏って、あたしを見つめている。そんな訳、ない。本当に頑張って欲しくて、“諦めない”って言い続けてきた朱希が諦める姿を見たくなくて、無我夢中だったんだもん。首を横に振ったら、朱希の表情が少しだけ優しくなった。



「……だろ?だったら、次にチャンスが来るのを待てば良いじゃん。待ってるだけじゃなくて、自分からも探しに行かなきゃいけないけどな。
こういう時の涼の口癖、何だっけ?」



 あたしを撫でていた手が、そっと止まる。それは、辛い気持ちを引きずりそうになった時、何度も心で唱えた言葉。あぁ……朱希は、覚えててくれてたんだ。



「……“I have no time to be depressed.”?」

「そう、それ。生きてる時間は限られてるんだし、納得いくまで何回も挑戦してみたら良いじゃん。何かあっても、俺がついてるし。まぁ、まだ全然頼りねぇけどな。」



 ――苦笑しながら言った朱希は、内心あたしを安心させてくれようと必死だったのかもしれない。あの時も、そして今も。彼は自分のやり方で、あたしを奮い立たせようとしてくれている。

 不器用でも、自己中心的でも良い。支え合う相手が朱希で、本当に良かった。そう思ったら、温かい水が両目から溢れ出てきた。


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