PURPLE DAYS
69
 ──朱希がコーヒーを啜りながら運転する横顔を眺めている内に、やっと気付いた。少し開けた窓の隙間から、潮風が流れ込んでくる。行き先は、あたし達にとって凄く大切な場所だった。

 BGMは、3枚目のディスクの10曲目である「BLUE BIRD」から、11曲目の「glitter」へ。丁度計算されたように流れた、二つのサマーソング。これには、朱希と目を合わせて笑ってしまった。



「わ……久し振りだね、ここに来るの!」



 車から降りると、眩しい日差しがあたし達に降り注ぐ。もうすぐ夏が来るから、この太陽もすぐに、もっとキツい光線をお見舞いしてくるんだろう。



「やっぱ、元気になりたい時はここだろ。引っ越してからあんまり気軽に来れなくなったけど、懐かしいよなぁ。」



 目を細めて、少し口角を上げる朱希。漆黒の髪が、サラリと風に揺れる。その横顔から、目が逸らせない。



「朱希……やっぱり、それで連れて来てくれたの?」

「だってお前、目に見えて元気なかったじゃん。引きこもられたら堪んないし……それに、ここは俺らの特別な場所だからな。」



 朱希の言葉が、胸に沁み渡っていく。あたしの心に、思い出がサァッと蘇っていった。


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あきゅろす。
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