PURPLE DAYS
53
side朱希



 ──仕事も終わり、フッと顔を上げて時計を見ると、9時を回っていた。いつの間にこんなに時間が経っていたんだろう、と不思議な気持ちになる。

 何かに没頭すると周りが見えなくなるのは、俺の悪い癖だ。分かってはいるんだけど、この年になったらなかなか直らない。何だかんだで、俺も22だからな。



「……やべっ、涼迎えに行かねぇと。」



 遅くなるなんて、死活問題だ。涼が何か危ない目になんて遭ったら、堪ったもんじゃない。

 急いで片付けすぎて書類を床にばら撒きそうになり、寸前の所でファイルにまとめて鞄に突っ込む。その時、肩を二回叩かれる感覚。振り向くと、極力関わりたくない人物が立っていた。



「早川先生、お疲れ様でしたぁ。」

「……あんたかよ。」



 ニコニコ笑っている橋本先生をよそに室内を見回すと、どうやら俺達しか残っていないらしい。何だよ、ベテラン組は効率良く仕事終わらせて帰ったってのか。まぁ、俺新人だし、しょうがねぇよな。

 そういえば、こんな奴に構ってる場合じゃなかった。俺には涼を迎えに行くっていう重大な任務が、まだ残ってるんだから。



「じゃあ俺、急ぐんで。」



 大体、何でこいつが居るんだよ。つーか、さっさと手ぇ離せっつーの。内心毒づきながら肩に置かれた手を退けようとしたら、耳にこんな言葉が入ってきた。


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あきゅろす。
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