PURPLE DAYS
50
side涼



「涼ちゃーん!お昼行こう!!」



 慌しい時間が過ぎて昼休みになると、明日美ちゃんがあたしを呼んだ。疲れを吹き飛ばすその声は、いつもあたしを元気付けてくれる。悩んでいる時も、辛くて苦しい時も。



「うん、行こう!」



 手早く書類をまとめて、ファイルに入れてからデスクに押し込む。「お待たせ」と言って、顔を上げる。そうしたら、5メートル程向こうの観葉植物の側。そこに居た高木君と、うっかり視線が交わってしまった。

 ――この前も飲みの誘いを断ったばかりだから、また何か言われるかもしれない。どうしよう、朱希に心配かけたくないのに。相手が動くのが見えて、次にすべきことを考えていたその時。隣から、少し張り上げられた粋の良い声がした。



「涼ちゃん、早く行かないと食堂混んじゃうよ!今日はAランチの日だから、行列出来ない内に席取っちゃおう?」



 明日美ちゃんに手を引っ張られなかったら、あたしは何も出来ないまま、あの人に捕まっていただろう。半ば引きずられながらも、「うん、急ごっか!」と返す。明日美ちゃんの機転の良さには、やっぱり一目置きたくなるな。


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