PURPLE DAYS
37
――驚きを顔全体で表した蛇女。翔梦や岩崎が“よく言った!”みたいな目を向ける中、涼はターゲットから視線を逸らさない。こういう所は、男から見てもめちゃくちゃかっこいいと思う。
ざまぁみろ、お前なんか涼の敵じゃねぇんだよ。これで事が丸く収まると思ってホッと胸を撫で下ろした、のに。この女は、どうやら相当図太い神経の持ち主らしい。
「……あら、それは失礼しましたぁ。じゃあ早川先生、私は先に戻りますね。後でお茶にしましょうねぇ、ふ・た・りで!」
“二人で”をやけに強調して去っていく蛇女。誰がお前なんかと茶飲みたいなんて思うかよ。ふと気付くと、岩崎と翔梦の顔もげんなりしている。こいつらが思っていることは、間違いなく“あの人、おめでたい頭してるなぁ”だろう。
「……ほんとに何なの、あの人……」
蛇女、もとい橋本玲子が消えた後、涼がポツリと呟いた。さっきの凛とした表情は薄れて、今は瞳に影が落ちている。岩崎がすぐに駆け寄って、涼に声をかけた。
「涼ちゃん大丈夫!?あの人、ほんとありえないよね!!
早川君!あのおばさん何なの!?いくら美人でも許せない!!」
怒りを剥き出しにした岩崎が、俺に向かって叫ぶ。それとは対照的に、涼に触れる手付きはとても優しい。
「……朱希、まさかあの人に迫られてるんじゃ……」
複雑な表情の翔梦が言う。“迫られる”って……もうちょい言葉を選べよな、おい。
「あー……まぁ、とりあえず、俺の周りをチョロチョロしてるな。ウザいだけなんだけど。」
まだ消えない憤りが、胸の中で渦巻いている。面倒の一言では済ませられない。被害が俺だけに降りかかるなら、良い。だけど、現に大切な人が苦しんでいる。何とかして、その曇り顔を笑顔に変えたいと、そう思った。
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