PURPLE DAYS
33
「……ちょっと!勝手に紹介しないでよ!!」

「良いじゃん、別に。な?」



 朱希はさも当然というように、生徒達に笑いかける。彼・彼女達も、それに応えて笑顔になった。



「先生の奥さん美人ですね!羨ましい!!」

「だろ?プラスかっこいいって最強じゃね?俺、たまに負けたって思うんだよな。」



 そう言って、あたしを見つめる朱希。本人は、自分が沢山の人の憧れの的になっていたことなんて全く知らないらしい。そういう自覚がない所も、好きだったりするんだけどね。

 それにしても、あたしのことを誉めすぎじゃないだろうか。“最強”は、あたしじゃなくてあんたでしょうが。



「……いきなりそんなこと言われると恥ずかしいんだけど。」

「あぁ?何処がだよ。」

「人前で言わなくても良いってことよ!まったく……朱希は全然変わらないね。思ったことをすぐに言っちゃうっていうか。」

「それを言うなら、お前も全然変わんねぇじゃん。俺に怒鳴るとことか、昔のまんまだし。」



 怒鳴るって……生徒さん達のあたしの印象が悪くなるじゃないの。だけど、間違ってはいない。嘘をつくのはやめておこう。



「……うん、否定はできないね。」

「だろ?つーか俺ら、高校の初対面の印象最悪だったよな。今でこそこんなんだけど。」



 フッと微笑した朱希が、懐かしげに言う。うん、ほんと良くなかったよね、あれは。

 でも、そのお陰で今のあたし達がある。そう考えたら、あの時出会えて良かったな。朱希が居ない人生なんて、きっと想像出来ないから。


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