PURPLE DAYS
31
「──わ、懐かしい……」
約四年振りに訪れた母校は、ほとんど昔のままだった。変わった所といえば、各部活動の部室が新しくなったことぐらい。あたし達は来客用スリッパを履いて、懐かしい校舎内をゆっくりと進んでいった。
古ぼけた下駄箱・少し汚れた廊下・青空の下に広がるグラウンド。朱希が活躍していた体育館に、思い出の詰まった教室……全部が凄く懐かしい。あたし達の出会いは、ここから始まったんだ。そう思うと、あの頃の気持ちが蘇ってくるようだった。
「……ねぇ、あれってもしかして朱希じゃない?」
翔梦が廊下の向こうを指差す。見ると、そこには確かに、朝一番に顔を合わせるあの人。生徒に囲まれている朱希が、今ではもう着なれたスーツに身を包んでいた。
「先生ー!この問題って何でこうなるんですか!?」
「俺もここ分かんないんですけど……」
「ちょっと!私が先に質問してたのよ!?順番守ってよ!!」
元気の良い現役高校生達に、思わず圧倒される。あたしが高校生の時もこんな感じだったのかな。そう思ったら、何だか笑みがこぼれる。
「……おい、お前ら落ち着けよ。俺の体は一つしかねぇっつーの。しかも、順番に並んだ方が絶対効率良いと思うけど。」
呆れたような口調で溜め息をつく朱希。だけど、あたしには分かる。あれは多分、“困るけど、頼りにされて嬉しい”って顔だ。
初めて見る表情に、胸がくすぐられる。黙って帰ろうかと思っていたけど、無性に声をかけたくなった。
「……朱希!めんどくさそうな顔しないの!!」
漆黒の頭が振り向いて、同じ色の瞳があたしを見やる。視線が交わった瞬間。朱希と初めて会話した時のことを、フッと思い出した。
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