PURPLE DAYS

「……もう!あたし先に行くからね!!」



 毎日毎日これだ。そろそろ早起きに慣れて欲しいのに、全く学習能力がないらしい。思わず溜め息が洩れる。得意の数学みたいに、是非とも短時間で攻略して欲しいものだ。



「……なぁ、涼。」



 朱希が突然、あたしの名前を呼ぶ。掠れた声にドキリとしながらも、起床の兆しかと思って尋ねてみた。



「何?やっと起きる気になったの?」



 あたしの言葉に、朱希は布団から顔を覗かせる。寝起きで乱れた髪が、何だか色っぽい。一瞬だけ、心臓がビシリと固まったように錯覚した。



「……うん。涼がキスしてくれたらね?」



 ――今、おかしな言葉が聞こえてきやしなかったか。頭の中で、朱希の言葉を整理する。



「キ……はぁ!?一人で起きてよ!!」

「あれ?涼、顔真っ赤じゃん。そんなに俺とキスしたいんだ?」

「なっ……違うわよ!!」



 慌てるあたしを見て、朱希はニヤニヤと笑っている。そのムカつく表情すらかっこいいけれど、愛しさあまって憎さ百倍だ。



「……どうしてもしなきゃ、ダメ……?」

「うん、ダメ。しないと今夜襲う。」

「はぁ!?勝手なこと言わないでよっ!!」

「うるせぇな……黙って俺の言うこと聞けよ。」



 その瞬間、突然体が朱希へ向かって引き寄せられる。抵抗する僅かな暇すら、あたしには与えられなかった。


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あきゅろす。
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