PURPLE DAYS
29
side涼
「涼ちゃーん!お客様よ!!」
エミさんの高らかな声に呼ばれて振り返る。今日は誰とも打ち合わせの予定を立ててなかった筈だけど……もしかして見落としてたのかな。
内心焦りながらも応接室に向かう。すると、そこにはしばらく会っていなかった人達が待っていた。
「涼ちゃんやっほー!会いに来たよー!!」
「実は涼が仕事してる所、ちょっと覗いてたんだよね。もう様になってるじゃん。」
ソファに腰かけて笑っていたのは慶華と翔梦。二人共、あたしの大切な親友だ。
就職活動に追われてる間は、みんなが忙しかった上に大学も違うから、ほとんど会えなかったんだよね。朱希と顔を合わす時間も勿論前より少なくなってたけど、早川家とは結婚式のことで色々と連絡取り合ってたからなぁ。朱希なんて、あたしの面接練習に付き合ってくれたくらいだし。意地悪な質問をされたことも、忘れていない。
その結婚式に、二人はついこの間来てくれたばかり。慶華はあたしの花嫁姿を見て号泣していたし、翔梦は友人代表のスピーチを担当してくれた。二人のお陰でとても感動的な式になったことは、言うまでもないと思う。
「わ、いらっしゃい!元気だった?」
「私は元気だよ!やっと保育士らしくなってきたって感じかな。涼ちゃんは相変わらずみたいね!」
そう言って微笑む慶華。相変わらずって、どういうことだろう。尋ねてみたら、「“クールに仕事こなしちゃってかっこいいね”ってこと!」だそうだ。
「早川君も元気?立派に先生してるなんて凄いよねぇ……」
「うん、朱希が教壇に立ってるなんてびっくりだよね。そういえば、いつ宏樹君と結婚するの?」
「二人が落ち着いてから、かなぁ。宏樹にはとりあえず会社に慣れてもらわないといけないし。
あーあ、私も早く涼ちゃん達みたいに結婚したーい!」
そう言って笑う慶華につられて笑顔になる。宏樹君は、通販事業を展開する会社に就職したそうだ。面白い発想をするらしい彼にはピッタリの仕事なんだろうな。
それにしても、あたしは慶華達の結婚が一番早いと思ってたのになぁ。まさか自分の方が先だなんて思わなかったよ。そのことを伝えたら、慶華は右手の人差し指を立てて、「甘い甘い」と左右に振った。
「だって、涼ちゃんの相手はあの早川君だよ?私は結婚も出産も早いと思ってたけどなぁ。
それに、二人の家族が凄く仲良しだし、結婚に協力的だったもんね!」
慶華はそう言って、翔梦に視線を移す。翔梦は小さく頷いて、口を開いた。
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