PURPLE DAYS
28
「松本、ありがとな。俺、あの人にはたまに針の穴程度の感謝するくらいだから心配ねぇよ。気は利くと思うけど、何かそれも計算の上って感じがするんだよなぁ。」

「先生!そんなこと本人の前で言ったら怒られますよ!?」

「別に良いんじゃねーの、キレたらキレたで。全然怖くねぇもん。」



 唯一恐れることがあるとすれば、最愛の人が悲しむこと。ただ、それだけだ。怖いもの知らずだなぁとか何とか呟いた松本は、そんな俺を見て小さく嘆息する。



「そっかー……先生、強いんですね。なら大丈夫かな。まったく、私の彼氏にも見習ってもらわないと!」

「何、お前高1の分際で彼氏居んの?」

「分際って……別に普通じゃないですか。先生だって、奥さんとは高校からの付き合いなんでしょ?」



 そんな会話をしている内に、時間は過ぎる。腕時計に目をやると、そろそろ3限目が始まる頃だった。



「松本、そろそろ行かねぇと遅刻するぞ。」

「あっ、ほんとですか?じゃあ先生、また次の授業で!」



 手を振って走っていく松本に、軽く手を振り返す。そういえばあいつ、ここで何してたんだろう。物思いにでもふけってたのかな。まぁ、どうでも良いか。

 ゆっくりと、元来た道を辿る。これからは、あの人が居る時間帯の職員室を“不快な部屋”と思うことになりそうだ。でも、頑張れる気がする。それは多分、いつも心の中で支えてくれる人が居るからなんだろう。


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