PURPLE DAYS
19
「高木君、お疲れ様。結構飲まされてたけど大丈夫?」

「あぁ、平気平気!俺、酒には強い方だからさ。早川さんも結構いける方みたいだね。意外だったからびっくりしたよ。」



 高木君は、すぐ隣で壁にもたれて言う。あたし、そんなに弱そうに見えるのかな。悪いけど、小波家は両親ともお酒に強いのよ。心で呟いて、曖昧に笑っておく。



「まぁ、そこそこは、ね……」



 次に飲み会があった時に飲まされそうで怖いから、あくまでそう言っておく。安易にイェスだと言うと大変な目に遭うと、大学時代の友達から聞いたからだ。病院送りにされたら大変だしね。



「へぇー……じゃあ、今度二人で飲みに行こうよ!」



 高木君はニコニコしながら言う。あたしは意表をつかれて、一瞬だけ固まってしまった。もしかしたら、“え?”と口に出していたかもしれない。



「あの、そういうのはちょっと……あたし、結婚してるの。高木君のことが嫌いな訳じゃないけど、夫の信頼失いたくないんだよね。良かったら、またみんなで飲もう?」



 左手の薬指の指輪を見せると、高木君は少しだけ残念そうにした。好意を持ってくれていたのなら嬉しいけど、二人きりで出かけるのはどうかと思うので、丁寧にお断りしたつもりだ。



「そっかぁ……まぁ、気が向いたら一緒に飲もうよ!」



 怯むことなく笑顔で言った高木君。あれ、あたしの話聞いてたのかな……“結婚してるので、あなたと二人きりでは飲みに行けません”って言ったつもりだったんだけど。

 もしかして、ネバーギブアップ精神とか。あんまりしつこい人って苦手だなぁ……そう思った丁度その時、黒い車が近くの通路脇に寄るのが見えた。ナンバーを確認すると、朱希のだ。あたしは心の中で、“朱希ありがとう!!”と叫んでいた。



「……あ、お迎え来たから行くね!また明日……」



 高木君から離れて、小さく手を振る。とにかく早く帰りたいという思いが顔に出てしまったかもしれないけど、この際どうでも良い。



「あぁ、うん。じゃあ明日ね!」



 高木君も笑って手を振ってくれた。言い寄られてる気がするのは、多分気のせい。そう、気のせいだ。


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