PURPLE DAYS
蘇る
♪〜…
原曲とは違った、シンプルなピアノアレンジ。ピアノを弾いているのは20代の男性らしかった。
織春は彼と一瞬目を合わせると、すぅっと息を吸った。
「♪風に舞う花弁(はなびら)は
いつかの僕を 思い出させる
桜風吹く この場所に
あの日も僕は立っていた
心に残る思い出は
“綺麗”ばかりじゃないけれど
忘れてしまう その時を
何故か恐れる僕がいる──」
…あの時のボーカルの声とは違うけど、強くて確かな力を感じた。
歌い手が違っても、曲に込められた思いは伝わるんだな……と、そう思った。
「♪人はきっと憧れる
自分が決してなれないものに
あなたは“永遠”に
憧れますか?
叶わないものを
望むのですか?
僕は 桜舞うこの時だけが
永久(とわ)に続けと
願っているよ──」
真夏のステージに、ひらひらと桜の花びらが降ってきた。
勿論造花だったが、照明の白とピンクの加減やスクリーンに流れる当時のQuintetの映像と調和して、自分の周りが一瞬春に包まれた様な気がした。
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