PURPLE DAYS
17
「仕事中のエミ、本当にかっこいいのよ!私達も見習わなきゃね!!」



 エミさんの隣で明るい声を上げた大柄な女性。彼女は佐藤夏香(なつか)さんといい、エミさんと同期だ。夏香さんはとてもお洒落な人で、今日はシンプルなダークスーツの首元に、水色地に赤い花柄のスカーフを巻いている。



「そういえば夏香、この前の東高校の演奏会での通訳、評判だったわよ!今日だって、井口コーポレーションに出張会議通訳だったんでしょう?お疲れ様!」

「ありがと!エミも過去の裁判の書類整理お疲れ様!私だったら、書類整理なんて誰かに任せちゃうわねー!!」



 ワハハと笑う夏香さんに、「こら!」と言いつつ微笑んでいるエミさん。この二人を見ていると、まるでコントを観覧しているような気分になる。そういうオンとオフの切り替えの良さも、見習いたい所だ。



「エミさんも夏香さんも素敵ですよね……あたしも頑張ります!」



 あたしが言うと、エミさん達はにっこり笑ってくれる。ウチの職場には陰険な上司が居なくて、本当に良かった。



「涼ちゃんなら大丈夫よ!センスあるもの。ねぇ、夏香?」

「うん。先週の結婚式のスピーチ通訳、良かったわよね!あれって新婦さんがアメリカ人だったんだっけ?分かりやすかったって、新郎側の親族の方が誉めて下さったのよ。
明日美ちゃんも、この前私と行った株式会社エイムの司会進行通訳、良かったわよ!原稿のミスってたまにあるんだけど、初めてなのに冷静に対処出来たわね。逆に向こうが焦ってて、後で土下座されそうになったのよ?あれは笑っちゃったわー!」



 先輩達に誉められて恥ずかしくなったあたしは、お礼を言いながらも俯いた。ふと隣を見ると、明日美ちゃんも照れ笑いしている。目が合ったので、思わず笑ってしまった。



「さぁ、飲も飲も!みんな全然飲んでないわねー。新人のみんなも遠慮しないでちょうだい!」



 エミさんの言葉で、みんなのグラスの減りが早くなる。あんなにピッチ上げて大丈夫なのかな……と、若干心配になった。



「みんな凄いねぇ……私達はマイペースに飲もっか?」



 苦笑する明日美ちゃん。あたしは頷いて、彼女の方へグラスを傾ける。二つのグラスがぶつかって、カラン、と音を立てた。


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あきゅろす。
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