PURPLE DAYS
近すぎる距離
「……いきなり何なのっ!?」
やっとの思いでそう言うと、朱希は顔を上げてクスリと笑う。憎たらしいくらいに、“綺麗”だ。男の人にその単語を使うのは、多分朱希が最初で最後だと思うのよね。
あたしがそれを口に出せば、君はきっとおかしさを堪えきれずに笑うのだろう。君がいくら魅力的でも、君自身がそう思ったことは一度たりともないようだから。
「……だって、急にしたくなったんだもん。ダメ?」
意地悪な笑顔は拒否権を持たせてくれない。君の前では全てが肯定に変えられてしまうような気がする。
「や……ダメっていうか、びっくりするんだけど…」
「ふーん……ダメじゃないってことは、続けても良いんだ?」
朱希はあたしに顔を近付けて、唇が当たるか当たらないかくらいの距離で言う。反射的に「近いよっ!!」と叫ぶ。そんなことは分かってんだよ、と言いたげな瞳が妖艶に光っている。
……朱希の顔が近すぎて、頭が思うように働かない。触れそうで触れない危険な距離。体の左側の小さな臓器が激しく鼓動していた。
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