PURPLE DAYS
近すぎる距離
「……いきなり何なのっ!?」



やっとの思いでそう言うと、朱希は顔を上げてクスリと笑う。憎たらしいくらいに、“綺麗”だ。男の人にその単語を使うのは、多分朱希が最初で最後だと思うのよね。

あたしがそれを口に出せば、君はきっとおかしさを堪えきれずに笑うのだろう。君がいくら魅力的でも、君自身がそう思ったことは一度たりともないようだから。





「……だって、急にしたくなったんだもん。ダメ?」

意地悪な笑顔は拒否権を持たせてくれない。君の前では全てが肯定に変えられてしまうような気がする。




「や……ダメっていうか、びっくりするんだけど…」

「ふーん……ダメじゃないってことは、続けても良いんだ?」



朱希はあたしに顔を近付けて、唇が当たるか当たらないかくらいの距離で言う。反射的に「近いよっ!!」と叫ぶ。そんなことは分かってんだよ、と言いたげな瞳が妖艶に光っている。





……朱希の顔が近すぎて、頭が思うように働かない。触れそうで触れない危険な距離。体の左側の小さな臓器が激しく鼓動していた。




[*←前][次→#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!