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赤い糸は



─────────カキーン
その音を聞いて横を見ればボールが転がってきた。走ってくる金に近い茶色に僕は少し眉間にシワを寄せた。

「ボール投げて」
にっこり笑う茶色はミットを上に上げた。僕は性格が思っているほどよくないのかなぜそれにムカつきその要望に応えずただ投げられたボールを眺めていたらその茶色が近づいてきた


「投げてって言ったじゃんよ〜」
「なんで僕が君の言う事に応じないといけないわけ」
「そんなカリカリすんなよ」
ニヒッと笑い茶色は人懐っこい笑みを零し少し目線をそらせばユニフォームの端にデカデカと藤代と書かれている


「まぁボールありがとな、」
ボールを取ろうとすればふいっとボールを持っている手を引いた

「………え?」
「!?」
自分の行動に雲雀は一番驚いていた。いや藤代も驚いていたが当の本人が一番不思議がっていた


「あの、ボール」
「………僕も返そうとしたんだけど、体が勝手に動いた」

「は?」
「?」
プフフフフ
いきなり笑った藤代に雲雀は一瞬驚き次に眉間にシワを寄せた

「なに笑ってるの」
「いやぁ〜おもしれぇからさ!」
学ランを来た雲雀を見て大笑いした。それに不機嫌な雲雀の顔を見て南波は少し焦ったようにハッと笑いを止めた


「そういや名前なんてぇの?」
「雲雀恭弥、君は?」
「藤代南波、てゆーか雲雀って中学生?」
呼び捨てに少しムッとしながらも返答をした

「並盛中だよ」
「マジで?俺来年行くんだ〜先輩じゃん、じゃぁ雲雀さんって呼ばなきゃ」

案外礼儀はきっちりしているとその一言で思ってしまい、雲雀は第1印象茶色が野球の礼儀正しい奴に変わっていた。


「並中で学ランなんスか?格好いいな」
「風紀委員だけだよ」
「え〜限定!?俺絶対体育委員になりたいんだよなぁ」
と迷いだした南波を見て雲雀は少し顔を緩めた

「雲雀さんってイケメンっスね」
にこやかに言う南波に雲雀は少し顔を引きつらせた。


「君バカって言われるでしょ?」
「あれ、なんで知ってんの?エスパーか」

「(アホだコイツ)」
でも憎めないのは何故だろう。にっこり笑う南波は口端の八重歯がいやに可愛らしく見えていた、雲雀は無意識に南波の茶色の頭にポンッと手を置いた


「??」
「…………?」
自分でも何故こんな事をしたのかわからなくて雲雀は頭を傾げるも南波はにこにこ笑っていた。

「ってゆーか俺そろそろ戻らないとヤバいんで!」
ボールをミットに埋め一礼して立ち去った。背番号は1番、あんなバカが貰っていい番号なのかと思いつつ雲雀は口端を上げた



「南波ね、悪くないな」

雲雀は小さくなる背中をずっと見て笑った。満足そうに、
────────懐かしい夢を見た
と起き上がれば南波がにんまり笑って雲雀の横でしゃがんでいた


「………なに?」
「いやぁ〜超嬉しそうな顔してっから俺も嬉しくて見てた」
えへへと笑う南波に雲雀は溜め息混じりに自分の顔を隠した

「バカでしょ」
「いやまぁ、万年赤点すれすれだけどさ」
「(そう言う意味じゃない)」
そう思うもきっとこの激鈍にはわからないのだろうとまた溜め息を落とした


「じゃじゃーん!数学と英語初の90越え!あざぁす恭弥!お前は神だ!超先生喜んで泣いてやんの」
「僕が教えたんだから当たり前でしょ」

「まぁな!これで俺の行きたい高校に一歩近づいた」
そう言う南波に雲雀は振り返った。聞いていないのだ、そんな事



「君行きたい所なんてあるの?」
「おう!雲雀と同じとこー」
「!」
にかっと笑う南波に雲雀は溜め息なんか出せずただただ顔を赤くしていた。


このバカが小学生の時、僕と会ってたという事を覚えているはずもなく、中1の時に接触しているという事も覚えているはずもなく。
南波の友達(山中)によると、あいつは有り得ねーくらい人物覚えられねーからと言っていた。いやでも本当にバカ過ぎる。

わかっているのだろうか
僕が行く高校は県のトップだ、しかも僕は推薦でもう確定している。


でも彼はやると言ったら必ずやるらしく、それは僕も認める。いくら赤点を取っても模試ではきっちり平均点以上とるのだ、だからきっとバカではない。いやバカだ、彼はバカだ
雲雀はよくわからないなと首を傾げるも南波は教材を雲雀に渡し「頼んだぜ先生」といつものように八重歯をちらつかせ笑った




「バカが高校に入れたら驚きだね」
「うっせぇぜってー入る!同じ所入んの!恭弥にいらん虫がついたら困るからな!」

そして入る理由がそんな理由。
雲雀は今日何度目になるかわからない溜め息を零し南波の頭を叩いた


「いてっ」
「バカは黙ってろ」
「あははひでぇなぁ」





赤い糸は結構短いらしい
(バカだ、でもそんな彼にいちいちドキドキしている僕はもっとバカだ)








あきゅろす。
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