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ざんざめくいのち



筧移駿河(18)
ボンゴレファミリー/霧の守護者/第一部下/幻覚*戦術

175センチ/58キロ/7%
利き腕/右
視力/右*2.0 左*1.5
一人称/僕


成りきれと言った彼の資料を見れば全て自分に該当し、加えて写真すらも自分だ。ただ一人称が違うだけだ、渡された駿河ファイルと言うファイルにある映像には戦闘スタイル、笑い方、ただ喋り方が自分より丁寧なだけで…全て類似している
─────────怖い



「大丈夫?」
「あぁ、覚えた」
「じゃなくて…君が、」
「心配するなら頼まないでくれる?」
「ごめん…なさい」
「冗談だよ、ボス。任務を僕がしくじった事ある?安心しなよ、どう似てる?」
「………………完璧、」
綱吉はその出来栄えに驚嘆していた。違いは消えたのだ。周りからすれば奇異な映像に見えるだろう。駿河は綱吉の言うとおり骸の部屋に向かった、通る度に周りが自分に振り向く。気持ちが悪い、それに…居心地が悪い


「骸、」
「!駿河」
「昨日はゴメン…ね、僕驚いてて」
「いえ、平気です駿河の方こそ大丈夫ですか?どこか悪い所…とかありますか?」

「ううん大丈夫だよ、」
骸は眉を寄せ駿河を抱きしめた



「!…骸?」
「なぜ真っ先に僕の所に来てくれなかったんです?」
「そのまま隠れようと思った…でも骸が自殺未遂を何度も繰り返しているってボスから聞いて…心配で…」

「………すみませんっ」
「もう、しない…よね?」
「はい」
「約束だよ?骸」
「あなたがいるなら僕が死ぬ理由なんてありません」
「…うん」

「愛してます、駿河」
「!………………うん」
俺は今上手く笑えているのだろうか。笑い方も把握している、だけど何故かコイツからその言葉を聞いた瞬間、心が冷えて…引きずり戻された


(コイツは俺に自分の好きな奴を映しているだけだ)

(気持ち悪い)
(平気で)
(演じて、)
(平気で)


(嘘を吐ける、"俺"も)

(十分、)


(気持ち悪い)




「駿河、」
ゆっくり指を絡められ、顔を近づけられた。さすがはボンゴレだろう、キスシーンまでご丁寧に資料に記載してあったため、把握済みだ

「(仕事だ…仕事)」
冷静に考える自分はすぐにでも骸から離れたくなるのを抑えた。


「(俺は何をしているんだ、ろう)」
「、駿河」
「な…に?」
「いえ、ただ嬉しくて…駿河と喋っているのが夢のようで、少し感動してます」

「それはさ、」
(どういう意味…?)



「駿河、呼んで下さい」
「骸、」
「………もっと、」
「骸…骸、むくろ」
「っはい」

「大、すき…だよ」
「僕も大好きです、駿河」
にっこり笑らう骸を目の前にして僕は…"俺"は泣きそうになった。これは…いけない事だ。誰かがその人に成りきれるハズなんて無い。それ以上にこの行為は裏切っている



「もし…俺が死んだら骸はどうする…?」
「………………………」
「嫌だなぁ、もしだよ?俺が死ぬ訳ないじゃん」

「僕も後を追って死にます」
「あ、…」
真剣に言う骸に声が震えた


「骸らしく無いよ…僕があなたを追って死ぬなんてお考えですか?そんな筈ないでしょう?ばかばかしい、とか言ってよ」
「事実です、嘘はつかない。約束ですよね。駿河を失うくらいならこの世なんて壊れ崩れればいい」

「相変わらず、なんか凄い」
「僕には駿河だけですから」
嬉しそうに微笑み"俺"に唇を寄せる骸に酷く心が揺れた




「どうだった?バレてない?」
「……………沢田綱吉…バレて無いよ、俺がどれだけコイツの行動、言動、思考回路について覚えたと思ってんだよ、つーか気づかねーのかよ骸…なんか好きとか言っておいて気づかねーなんてどうかと思うけど」

「……………そんな事を思ってるのに、きっちり成りきる駿河もどうかと、思うけどねオレは」
そう言って笑うツナに駿河は渋った顔をして横を歩いた。それにツナは困ったような顔をした

「("あの骸"が、気づいてないなんて…あるのかな?考え過ぎじゃなかったらいいけど)」




「(気持ち悪い)」
全て、アイツは俺じゃない誰かに愛を囁いて、愛を押しつけてくる。俺は誰かじゃない…俺は俺で他の誰でもなくて…

──────────俺って誰だ?

ぐるぐる考えれば俺は吐いていた、ザーとシャワーの音が耳につき落ち着かせる。


(大丈夫、俺は)
(俺だ)

(骸が好きな相手じゃない)
(ただ)


(アイツが死なないように)
(見張ってる、保護係…)
(友人でも、ましてや)

(恋人なんてもんじゃない)
(他人なんだ)



(大丈夫、好きなったりしねぇ)
(大丈夫、)

(俺は…あくまで身代わりだ)





「身代わり…」
(なんか…それは嫌だ)
そう思った瞬間、俺はまた吐いていた。




ざんざめくいのち
(助けてと、叫びが聴こえる)








あきゅろす。
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