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馨と男主



ただアイツはいつも僕達の事がわかって、空気みたいに溶け込んで水みたいに浸透して僕らを溺れさせていた

「どっちが光くんでしょーかゲーム」
じゃじゃんとドッペルベンガー並みに似ている双子の僕らは親でさえ判断し辛い、だがいつもコイツは的確に当てるのだ、


「光で馨だろ?毎回飽きねーな」
ふぁああとあくびをもらした。毎日やっても一度も外した事がない。最初に「そこどいてくれる?常陸院馨君」と言ったくらいだ、当てた事が気に食わないのか毎日挑戦して敗れる
違いがあるのかと問えば説明し辛いと返された。つまりアイツは完璧に解っている、
──────僕らの世界を壊したのだ

だが彼は壊す事も理解する事もましてや踏み込もうとすらしない。僕らの世界を逆に不安定へと誘(いざな)う


「翠はさぁ〜なんで僕らがわかるわけ?」
「その質問何回目?てかハルヒもわかんじゃん、ガタきてんじゃねーの」

「なにそれ」
「てゆーか解らない方が謎」
コイツは絶対に僕らの仲を乱さない。ハルヒは天然故に時々乱されるがコイツの場合は計算している、無意識かは知らないがここまでという線をしっかり引いてはみ出ないようにしている
まさに強者だ。
何もしない相手ほど気になる、喋れば相手をするだけに何を考えているか全くわからない


「馨どうしたんだよ?ボーとして」
「あ、いやなんでもないよ」
ハルヒ出現により光は無意識にハルヒを視界に入れるようになった。光は少し鈍感なのだ。少し寂しいと思えばアイツが口を出す

「馨そこ俺の席」
「別にいーだろ〜座るくらい」
「いやいいけどさ、光は?」
「ハルヒと一緒だよ」
「ふーん珍しい」
そう言って翠は前の席に座った。

「珍しい?」
「馨と光はセットだから」
「まぁ双子だからね」
「双子でも感性違うじゃん」
「?」
「別の個体って事、いくら似てても根っこはちげぇよ」

「……心理学者目指してんの?」
「別に?」

(別物の個体)
馨はそれを呟いた。他の奴に言われたならば当ててから言ってみなよと言えるがコイツはわかるのだ僕を、光とは違う。ちゃんと僕だと
僕と光しかいなかった世界にひょっこり顔を出したのだ


「なに馨、寂しいのか?」
「バッカじゃないの」
「寂しいくせに」
「なにそれ、どこにそんな確証があるんだか」

「顔」
「は?」
「顔に出てる」
「!」
「馨はさぁ貯めやすいから言わねーと鬱になるんじゃん、それに光思いだし」
その言葉に少し驚いた。コイツはしっかり僕と光の事を理解しているのだと、

(やっぱりコイツは僕らの世界を乱す)


「あれーなにしてんの?」
「あ、光」
「秘密の話してんだよ」
「えーなにそれ〜」
きょとんとした顔をするハルヒと秘密の話と言われた光は少し不機嫌な顔していた

きっと後で凄いだけ質問されるのだろう、光も翠を気に入っているから

─────────チクン
「?」
「なんだよ教えろよ」
「いーやたまには仕返ししねーとな」
「なんだと!」
「ちょ光止めなよ」
ハルヒが光を止めアハハと笑っている翠を見て馨は少し胸が痛んだ


「馨?」
「ん、なに?」
「なんかあった?」
心配気味に光が訪ねる、馨は後ろの翠と目があった

「?」
「いやなんでもないよ」
「そう?」
ゆっくり翠を見ると
『す な お に な れ』
と口ぱくで言う翠に馨はクスッと笑った


「バーカッ」
「てんめっ」

もし光が翠を好きになったら譲れるのだろうか、もし翠が光を好きになれば許せるのだろうか

「……無理だろーなぁ」
「なにが?」
「秘密」
馨は少し嬉しそうに笑った





世界崩壊間際
(僕らの世界は呆気なく破壊された)








080416



あきゅろす。
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