ボーダーライン
ある人は付き合ってからがスタートだと言った。そうなのかもしれない、いやでも実際これは付き合っているかも謎で、だって男同士だし…それに俺の片思いからやっと両思いになったから、だからまだ信じられない訳で
「雲雀?」
「なに邪魔、出てって」
そうこの態度だ。
(……なんでこんな冷たいの?)
「聞こえなかったの」
「あ、うん…わりぃ」
「…………」
翠は重たい空気の中、応接室を出て行った。後ろの視線なんて気づかずに
──────────パタン
(やっぱり付き合ってねぇよな…これ)
複雑そうに頭を掻く翠はその場を後にした、後ろに感じる視線なんて気づかずに
そしてもう一度来てドアを開けた時が運のツキだった。声が出なくなった、まさか男と一緒にいるなんて思わなかったからだ
「あ、わりぃ」
目の前には雲雀と金髪のイケメン。
なんて言っていいかわからなくなった翠は謝りまたドアを閉めた
(泣きてぇ)
(てゆーかなんだよふざけんな)
翠は泣かないように鼻を押さえ上を向いて屋上まで駆けて行った
(結局片思いじゃん)
(なんなんだよちくしょー!)
それから翠は雲雀に会いに行かなくなった、いやもう応接室にも行かなくなったしとことんまで避けた
俺はとある人の言ったスタートラインにまで足をつける事なくとんずらしたのだ。…でもあれは、はっきり言って遠まわしに振られた、いや直接か
そんな事を考えていると女子から話かけられた。はっきり言って喋れるほどの余裕はない、翠はにっこり愛想笑いをして頷いた
(好きじゃねーよ)
(だから良かったんだこれで)
いい聞かせる自分が情けなくなって来た。席を立って行く場所は決まっていて、屋上だった
「あーもう知るか!」
「俺だって好きじゃねーよ」
ぐすぐす鼻を鳴らしながら涙を拭く
「好きじゃねーよ」
「………好きじゃねーよ」
最早自分に言い聞かせているようにしか聞こえない言葉にまた涙が溢れた。
(なんで、こんな好きなんだよ…!)
初めは見てるだけだった。
ただかっこいいなぁ程度で自然と目は彼ばかり追っていて3ヶ月した所で彼から「いい加減にしなよ」と言われて自分の気持ちに気づいた。
そして告白すれば確かに彼は首を縦に振ったのだ、縦に振られた…あれは俺の幻だったのかな、なんて思うとまた悔しくてか悲しくてか涙が溢れてきた
「好きじゃねーよ!コンチクショー!」
叫んで深呼吸し後ろを見れば思考は見事に停止した、いやこれはもうフリーズだ…一生戻らないのではないだろうか
「ひ、雲雀」
「……………なにしてるの」
「いや…ちょっと」
「ふーん」
興味の無さそうな返事に胸が痛むが気づかない事にした、そしてゆっくり足を進め雲雀の横を通過しようとした瞬間、呼び止められた
「ねぇ」
「………なに?」
「僕たち別れるの?」
「……………うん」
「そう」
「うん、もう会わねーから」
ギュッと拳を握ったのは涙を堪えるためだ、最後に収められる雲雀の姿を目に焼き付けた…まぁ後ろ姿なんだが翠には十分過ぎるくらい幸せだった
「迷惑かけたな」
ガチャンと響いたドアが閉まる音がやけに鼓膜に残り心臓をえぐった
(やべーこれじゃぁ授業受けられねーよ)
目をゴシゴシ擦るがさらに悪化した
(……保健室行くか)
翠はなるべく目立たないように目元を抑え歩いた
「すいませーん、冷やすもの下さい」
ゆっくり目を開けば俺は余程運というものに見放されているらしい…金髪のイケメンが目の前にいた
「シャマルせんせー」
「シャマルなら今いないぜ?」
「そ、すか…俺ベッド借りるんで」
目を合わさずにベッドへとうなだれると金髪が氷の入ったビニールを渡して来た
「真っ赤だな」
「……ありがとうございます」
「おう!」
にかっと笑えば眩しすぎる笑顔にこれなら雲雀も好きになるはずだと思ったらまた泣きたくなった
「恭弥と付き合ってるんだろ?」
「…………付き合ってないです」
「え?」
「付き合ってないです」
目を隠しながら言う翠にもわかるくらい金髪は動揺をしていた、
(なんで動揺する必要があるんだ)
「雲雀の事好きなんすか?」
俺は初めて聞いてはいけない質問とやらをしたと思った。てか初対面の人に話かけたのが初めてだった
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