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古泉一樹の焦燥



なぜ俺は古泉なんかにあんな事を言ってしまったんだろうか、ただ少しコイツは嘘ばっか吐いてんだろうなぁとか思ったら口が勝手に動いていた。

「で、何歳なんだ?」
「えぇっと…今年で22歳になります」
「7つ上…、俺はお前が年上だろうと絶対さん付けで呼んだりしねぇからな」

「是非そうして下さい。僕もあなたに敬語を話されるのは抵抗があります」
笑う古泉の顔は普段見る胡散臭い顔では無く普通に笑った顔だった、それに何故だか俺はドキッとした。いや、俺が素を見せろと言っておいてなんだが、心臓に悪い


「あの…よければ僕の家に来ませんか?」
「なんで俺がお前の家に行かないと行けないんだ?」
「いえ、特に理由は…あなたが嫌ならまたの機会に、」

古泉は俺に断られたのが余程ショックだったのか、見てわかるくらいにシュンとし肩を落とした。なんなんだ、俺が何をした?なんだか見ていて可哀想になって「分かった、言ってやらん事も無いが、条件が有る。晩飯を奢れ」と言えば古泉はパァアアと花を開かせた。なんて分かり易い奴だ、これで7つも上だなんて分からない。下手をすれば俺が年上に見えるに違いない


ここは本当に人が生活する場所なのか、
難なく自分の部屋に入る古泉一樹は俺の存在に気づき嬉しそうに笑ってこう言いやがった。

「なにしているんです?早く入って下さい」
早く入ってだと?まるでジャングルのような、迷えば出てこれないで有ろう、樹海の森に入れと?
それになんだこのにおい。く、臭い、てか服と食い物が散乱しまくっている。なんなんだこれは。こんな爽やかみたいな顔してる癖に部屋汚過ぎるだろ、俺は今更ながら古泉宅に来た事を最高に悔やんだ


「キョンくん?」
「お前こんな所で生活してんのか?」
「えぇ、初めはきちんと整理してたんですが、機関の仕事が多くて…面倒臭くなりまして…そしたらこんな状態です」
あはっと笑いながら肩をすぼめ出したバカを殴りたくなったのは言うまでもない。俺はそれを押し殺し古泉に「コンビニでゴミ袋2つ買って来い」と命令して走らせた

俺はとりあえず、換気から始める事にした。この状況を見るに古泉はコンビニ弁当やデリバリー、添加物だらけで出来ているらしい。大丈夫なのか本当に心配になってきた



「キョンくん!今帰りました、だいぶ…綺麗になりましたね、凄いです」
「まだ服とか退けて洗濯してるだけだ、早く袋貸せ」
「あ、はい」
渡した瞬間、ゴミを次々入れて縛っていく、ゴミ袋の数は5つになっていた。呆然と見ていた僕は彼と目があった瞬間、鬼の形相で「明日はゴミの日だ、捨ててこい」とゴミの山を指差した。それに僕は頷いてまた、部屋から出た。あの部屋に床が見えたのはいつ頃だろうか。そもそもなぜ僕の為にこれほどしてくれるのだろうか、わからない。
帰ればまた綺麗になっていた。そしてまたゴミ袋が増えていた。彼は掃除のプロかなんかだろうか、そしてまた捨ててこいと言われた。次に戻った時は掃除機をかけ、床を磨いていた。僕はまたゴミを捨てに下へおりた、そして戻れば彼は台所を掃除していた、きっとトイレも浴槽も掃除してくれたのだろう

「おかえり、本くらい自分で片付けろよな」
「あ、はい…すいません。こんなに綺麗にしてもらって」

「お前あんな所で暮らしてたら死ぬぞ」
彼はそう言って後のショッキを洗い終わらしていた。そして振り向けば眉間にシワを寄せて近づいて来た


「お前は整理整頓が出来ないのか?ったく」
何やらブツブツ言って僕の何倍のスピードで本を片付け始めた。ほんの3時間強でゴミ屋敷同然だった僕の部屋は元の姿に戻っていた

「あ、あの…なんかすいません」
「本当にな」
キョンくんは少し笑った、それを見た瞬間なにやら胸が上下したように感じた。意味がわからない。全く自分が分からない不明な物は苦手だ、だからそんな顔で笑わないで欲しい


「じゃぁそろそろ帰る」
「えっ危ないので送ります」
「かまわないさ、てか男に危ないってなんだ?そんなのは朝比奈さんや長門やハルヒに言ってやれハルヒだって女なんだからな」

「あなたも危険だと思います」
「どういう意味だ?」
あなたを狙う男女の数を知らないのだ、あなたは影言われているのに気づかないのだろうか、競争率が非常に高い事を

「ま、まぁ何か事件など起こされても困りますので送らせて下さい」
「言っとくが俺は犯罪を犯すつもりはないぞ」
そう言ってぶつぶつ理屈めいたぼやきを吐く彼に笑って送る事にした



古泉一樹の焦燥






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