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古泉一樹の妄執


僕は今、無謀な恋をしている
性別はおろか、世界まで敵にまわしているのだから。そう僕が恋い焦がれてやまないのは、世界の創設者。神。と呼ばれる涼宮ハルヒのお気に入り、いや僕と同じようなドロドロとした欲望、感情を向ける人間だ

そんなの、1人しかいない



彼は誰にでも優しく、僕にだけ厳しい。何だかんだ文句を言っても涼宮ハルヒの言う事には従う、いや見守ると言った方がいい。彼らの信頼し合っている。朝比奈みくるに対してはタイプなのだろうか、全面的に優しい。そして最後に長門ユキ、彼から頼られそして彼女も彼を心のより所にしている、彼女に向ける視線は常に保護者のように優しく、それを見ると癒される、なのに僕には冷たい


「………ぃ、………み、古泉!!!」
「!………はい、なんでしょうか?」
「何が何でしょうかだ、お前俺の話聞いて無かっただろ?」
じろりと睨まれ喉が窄まるのが分かった、僕は彼に責められるのを最も嫌うらしい

「すみません、どのような話でしたっけ?」
「もういい、別に大した話じゃないしな」
そう言われれば困った顔しか出来ない、僕はニコニコ笑っている事が義務づけられているのだから、笑っている事は周りに好印象を与えるらしい。だが彼は違うらしい、僕がニコニコ笑えば倦怠そうに顔をしかめた。それほどまでに嫌われているのだろうか


「古泉」
「?はい」
「やっぱり超能力者とやらは大変なのか?」
「そうですね、涼宮さんが不機嫌にならなければ楽でしょうね、僕らは涼宮さん次第で楽にもなるし、死んでしまう事もあります、どうしたんですか?あなたがこんな事を聞くなんて」

チラリと視線を向ければ「別に」と言う返事が返って来た、何か思う事が合ったのだろうか?そう思うも言葉に出来ず自然に黙り込んでしまう。僕は堪らず窓を見ていた、そんな中、沈黙を破ったのは彼だった


「お前はハルヒが必要としたからいるんだろ?」
「えぇ、そうです」
「ハルヒが望んだからいつも胡散臭く笑ってんだろ?」

「胡散臭いなんて失礼ですね、まぁ否定は出来ませんが。そうですね、僕は彼女の世界の一部すらなれない駒のような物ですから彼女に逆らえば僕なんて直ぐにでも消されますよ」

「そうか、」
そう言って彼は口を閉ざした。些か言い過ぎただろうか、これではまるで僕が可哀想な奴だと主張したみたいな物だ、弁解せねばと頭をぐるりぐるり回転させていると、彼はまた口を開いた


「しんどくないのか?」
「え?」
二度、質問を繰り返す事はしなかった。彼はしっかりと僕を見て返事を待っていた

「正直言って辛い時もあります、でもそうするのが僕の義務ですし…慣れてしまったので、今は別に苦ではありません」
苦笑混じりで言えば見つめる澄んだ目が僕の汚い部分まで見通されているようで胸がざわめいた


「俺はお前が嫌いだ」
「…………………………」
「だからそんな胡散臭い顔俺に向けんな」
「…………………………」
「だからだな、俺は事情を知ってる訳だし…その、俺には素を見せていいんじゃないのか?」

「は………い?」
頭が真っ白になった。つまりなんだ?彼は僕に僕に俺らしくしろっと言っているのだろうか?………彼は気づいているのだろうか、それは…それは、

僕は慌てて、ハッとしたように彼を見て呆然とした。彼は無意識のようだ、彼はいつも鈍感で無意識で、すうっと心(なか)に入ってくる


「古泉?」
「あ、いや…そんな事…出来ません。あなたは涼宮さんの大切な人で…」
「別に俺とハルヒは付き合ってる訳じゃないだろ?」

「あなたはそうでも彼女はそうではないかもしれないじゃないですか」
「ハルヒハルヒってお前はどうしたいんだ?俺に素を見せるのが嫌ならそう言えばいいだろう!?」

「ちっ違います!!!」
「じゃぁなんだ!」
「引かれるのが怖いんです」
言った途端、空気が静かになるのが分かった。バッと見つめ合う形になって僕は彼の反応を見た

「キョ…ンくん」
「何か引かれる事でもあるのか?」
「いや…そういう訳ではありませんが…」
「それに安心しろ、今の俺は大概の事で驚かないように出来てるから」

「えぇ…ですが…」
「なんだよもう、うじうじ気持ち悪い奴だな!もういい!俺は何も言わんっ」

つ…ツンデレ。内心、悶え放題だが顔には出さなかった、僕はツンになった彼を宥めるように腕を掴んで部室を出て行こうとするのを制止させた


「は な せ」
「嫌です!」
「は な せっ!!!!」
「嫌です!……僕はいつも自分を出してはいけないと思っていました、唯一安らげる場所は自室で、ですが機関に呼ばれればそれは叶わなくなります…人に素を見せるなんて生きていていく、そんな事した事がないので正直どうしたらいいか…わからないんです」

僕は今どんな顔をしているのだろうか、彼の顔が少し変わった。なんと言っていいかわからないくらいに複雑な表情だ

「まぁ、俺はお前が壊れなかったらいいんだ。なんだかんだSOS団でいるの好きだしな、で何かお前は俺に言うことないのか?」
「え……?」
「そんな顔してる」

「あ、あの!」
「なんだ?」
「僕、実は成人してるんです!」
「…………今、それを言うのか?」


古泉一樹の妄執







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