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私の愛にこたえて…
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しかし彼の手前それを否定する勇気もなく、かと言って肯定する気もない。
 
答えようとしない私に苛立ったのか、先生の眉間に不機嫌そうな皺が出来た頃。
 
 
 
「本気だよ」
 
 
やや声を低くして、彼が答えた。
 
それに先生も私も驚き、目を向ける。
 
 
 
「じゃなきゃ、紹介なんてしないし!」
 
 
先生の不機嫌な雰囲気にあてられたのか、なぜか彼は喧嘩腰なキツい口調で言った。
 
そこで先生はもう一度私と目を合わせるが、私は何も答える事が出来ず静かに目を伏せた。
 
 
 
「駄目だ。認められんな」
 
 
彼が本気である事、それに対し私が否定的である事を察したのだろう。
 
先生は私の望む言葉をくれた。
 
 
 
しかし、それに彼が黙っているはずがなく、声を上げて言い返す。
 
 
 
「何で駄目なんだよ!?てか、認められないって!そんな事、兄さんに決める権利なんかないだろっ!!」
 
「駄目なものは駄目だ」
 
「だから、何で駄目かって聞いてるだろっ!?」
 
 
先生は冷静に返すが、彼はさらに否定された事でより声を荒げ怒鳴った。
 
先生が彼から視線を外し、少し悩むように俯いた。腕組みをし、溜息をつく。
 
 
 
「入宮だから駄目なんだ」
 
 
それでいい。
 
彼が誰と付き合おうが、相手が私でさえなければ良いのだ。
 
 
先生が言い放った理由に、彼はしばし唖然として固まった。
 
なぜ私だといけないのか分からないのだろう。それは話していないのだから仕方のない事。
 
納得はいかないだろうが、ここまで断言され否定された以上は何も聞かずに身を引いて欲しい。
 
 
私はただただ静かに切願した。
 
 
 
 
 
「…………だ…」
 
 
やっと口を開いた彼は、聞き取れないくらいの小さな声で何かを呟いた。
 
先生と私が注目すると、彼はもう一度その言葉を発する。
 
 
 
「いやだっ」
 
 
まるで駄々っ子のように口を尖らせて、彼はきっぱりと拒否をした。
 
先生がまた溜息をつく。
 
 
 
「お前が嫌だろうが関係ない。そいつとは今すぐ別れろ」
 
「なっ…!」
 
 
彼が納得いかない視線を送る中、先生はもう彼と目を合わせる事なくそう言い聞かせた。
 
そして、私を睨み命令するように言った。
 
 
 
「入宮も、もう虎二郎には近付くな」
 
 
これで、私が一言「はい」と言えば全てが終わる。楽になれる。
 
望み通りの展開に安堵し、いざ肯定の言葉を返そうと口を開いた瞬間。
 
 
 
「いい加減にしろっっ!!!」
 
 
 
その怒鳴り声は、骨のぶつかる鈍い音と共に聞こえた。
 
 

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