私の愛にこたえて… ,9 あの男は、彼よりも格好良くて男らしくて、たくさんの女性からモテていた。 女に困る事はなかったはず。 それなのに、幼くて男でしかも愛想もない生意気な私を選んだ。 初めは断った。 次は避けた。 はぐらかして、罵倒した。 それなのに、諦めてくれなくて、 結局、私が諦める羽目になった。 左手の薬指を見た。 こんなロマンチックな物は、私には似合わないと思う。 夕日に照らされて、 とても美しく綺麗に輝く石に魅入った。 『永遠の愛』 正直、クサ過ぎて笑ってしまう。 「好きですよ、入宮さん」 あの指輪を受け取った私に、彼は幸せそうに微笑んだ。 それに微笑み返すと、彼は軽いキスをくれた。昨日の事を反省しているから、今日はそれに止まったのだそうだ。 端から見れば、幸せそうなカップルかもしれない。 けれど、 私から愛を語る事は出来なかった。 口に出したら最後。 本気になってしまうから。 純粋で無垢な彼の恋を、 私の愛で汚してしまう事が恐かった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |