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私の愛にこたえて…
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「成雲、成雲…」
 
 
 
気付けばもう宵の頃。
 
 
成雲のお祖父様は私を快く思っていない。生い立ち、性格、外観、全てがそうさせているのだろうが、そのせいで成雲の立場を危ぶめてはいけない。
 
あまり長く一緒に居てはお祖父様から何を言われるか分からないため、いい加減起こして家に帰さなければ…と声をかけた。
 
 
 
「……ぅ…ん、入宮…」
 
 
 
もともと寝起きの良い成雲はすぐに目を覚まし、まだ眠たげな瞼をゆっくりともたげる。
 
 
 
「もう6時ですよ、お帰りになりませんと」
 
「あー、もうそんな時間か…」
 
 
 
寝過ぎたな、ははっ…と笑いながら体を起こし時計を見る成雲。
 
窓の外は夏のおかげで薄明るいが、時計はすっかり夜の時間へ移ろうとしている。もうすぐ夕飯で、早くしなければ上でお世話をしている母が乗り込んで来るだろう。
 
 
 
「お腹空いたな」
 
「もう夕飯ですから当たり前ですよ」
 
「いや…」
 
 
 
腹部をさする仕種を見せる成雲に当然の答えを返すと、なにやら口ごもって苦笑い。まさか…と驚き目を見開くと、バツが悪そうに笑う成雲は口を開いた。
 
 
 
「昼もまだだ」
 
 
 
それじゃあ空腹にもなる。
 
 
 
「全く食べる気がしなくて限界だと思って来たんだがな、寝たらちゃんとお腹空いたよ」
 
「それはそれは、お役に立てて本望です。さぁさ、早く帰って食事をとりなさい」
 
「なんだ冷たいな」
 
「呆れてるだけです。人には食べろ食べろと言う癖に」
 
「う…」
 
 
 
はぁっとわざとらしく溜息をついて、成雲をベッドから追い出す。不満げに出ていく成雲にさらに言い返すと、図星を突く話に言葉を詰まらせた。
 
 
 
「そういうお前は食べたのか?」
 
「……………」
 
 
 
実は私も食べていない。
 
上手く嘘をつけば良いものを、ついつい言葉を無くして口を噤んでしまいバレてしまう。
 
フンッと鼻で笑った成雲は、先に見抜いていたのか何も言わずに寝室を出ていく。
 
 
 
「久しぶりに入宮のご飯が食べたいな」
 
「今日はもう無理ですよ」
 
「じゃあ、明日」
 
「分かりました、ではまた明日」
 
 
 
服装を整えながら歩く成雲を玄関まで見送り、明日の約束まで取り付ける。明日もまた成雲に会えると思うと嬉しくて仕方がないけれど、そうも素直になるのは恥ずかしくて冷静に返す。
 
 
 
「愛してるよ入宮、おやすみ」
 
 
 
最後に頬にキスをくれて、上機嫌の成雲は去って行った。
 
 
 
しばらく玄関で立ち尽くし、温もりの消えない頬に手を添えていた。
 
 
一瞬、恥ずかしげもなく愛を囁く成雲に、心奪われそうになった。
 
もっともっと愛されたいと思った。
 
 
 
 
 
あの優しさが、
 
私だけのものになれば良いと思った。
 
 

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あきゅろす。
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