私の愛にこたえて… ,3 「成雲…」 誰も出る者のいないインターホンへ近付くと、受話器のディスプレイに映し出されていたのは、かすかに目の下に隈のできた成雲の顔。 4日目にして成雲も息苦しさに耐え兼ねたのだろうか。なんとも心配ではあるが、それよりもまず、来てくれた事が嬉しくて仕方がない。 成雲の家族の住まいはここの一つ上の階、このマンションの最上階で、行き来しようと思えば簡単に移動できる距離だ。 けれど部下の私が気軽に上を訪ねるのは少々…いや、かなり難しいものがある。 だから成雲が来てくれるのを待つしかなくて、でも成雲だって気軽に家を離れるのは難しい。 ―――やっと来てくれた…… 決して私を裏切らない。頼って信じて、愛して病まない、心強い私の味方。 そんな存在の人の来訪に、淡い幸せを見つけた私の心は舞い踊る。 インターホンのボタンで鍵の遠隔操作ができるのだけど、直接出迎えたくて仕方がないほど舞い上がった私は、小走りに玄関まで駆け付けた。 ガチャッ 「いらっしゃい、成雲っ」 喜びのあまり声を弾ませ、自然と浮かんでしまう満面の笑み。 「なんだ、元気そうだな入宮」 至極陽気に出迎えた私を少し驚いたように見て、次には私が無事でいた事を喜ぶようにふふ…と微笑む。 その柔らかな成雲の笑顔に、今にも見失ってしまいそうだった希望を思い出す。 「貴方が来て下さったから、もう元気いっぱいですよ」 「おいおい、今度はやけに素直で気持ち悪いぞ…。変な薬でも飲んだんじゃないだろうなぁ」 「失礼ですね!貴方だって私に会えて嬉しくて堪らないのでしょう?」 「まぁな」 正直に喜んで見せれば成雲が気味悪そうに私を見やったけれど、なんだかんだ成雲もやっぱり私を望んで来てくれたのだと素直に答えた。 お互いに慣れない環境に疲れて、嫌味を言い合う余裕なんてないらしい。 ちょっと調子の狂った私達は、お互い顔を見合わせて愉快に吹き出して、 「寂しかった」 「ええ、私も」 ちょこっとだけ本音を言って、固く抱きしめ合った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |