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私の愛にこたえて…
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夕方になり日も暮れ始めたにも関わらず、窓の外では蝉が盛んに鳴いている。
 
室内は暑く、私は額から止めどなく汗を流し、大好きな熊の縫いぐるみを抱きしめて部屋の角に体育座りをしていた。
 
 
 
 
 
そして、母が帰って来た。
 
 
 
 
 
「ただいまー」
 
 
 
良くも悪くもない声色で、帰宅の挨拶を口にする母。
 
玄関から上がると、トイレの前で立ち止まり訝しげに周囲を見回した。
 
 
 
「………なんか……臭くない…?」
 
 
 
 
 
ゴミ箱から落ちたショックで私が漏らしてしまったそれは、暑い空気に曝されすっかり乾き切っていた。
 
今、その場所にはやや黄ばんだ染みが出来ている。
 
 
母は無言で立ち尽くし、しばらくの間それを見下ろしていた。
 
 
 
「これは……何…?」
 
 
 
ふと言葉を発し始めた母の声は低く、そして震えている。
 
 
 
「ねえ、我慢してって言ったわよね?」
 
 
 
 
 
「どうして何も言わないの?」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「こっちへ来なさい」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「文芽」
 
 
 
 
 

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あきゅろす。
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