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私の愛にこたえて…
/影籠
 
 
 
 
 
エアコンのない1Kのアパートの一室。
 
家電と言えば、小さな冷蔵庫のみ。
 
そこが母と私の家だった。
 
 
 
 
 
私の食事は、水に浸しただけの白米のみ。
 
 
固くてとても食べれたものではないそれを、私は毎日朝晩きちんと食べ切っていた。
 
いつも暴力を振るう母も、それを食べ終えた時だけは「いい子だね」と、そう言って私の頭を撫でてくれたから。
 
 
 
そして母は固い米を必死で食べる私の目の前で、パート先のスーパーで買ってきた美味しそうなお惣菜が詰められたお弁当を食べていた。
 
 
良い匂いのするそれを、欲しいと訴えた事がある。
 
酷く叱られ、吐くほど叩かれ、2日間食事が貰えなくなった。
 
欲しがったのはその一度きり。
 
 
 
飲み水はバケツに溜められた水道水。
 
 
やっと2歳という頃だった私には流しの上に手が届かなくて、その為に母はいつでも飲めるようにとバケツに水を溜めて置いていた。
 
それは、母が家にいるいないに関わらず。
私はそれを手で掬って飲んでいた。
 
 
 
 
 
その部屋には水洗トイレと風呂はあった。しかし、どちらも鍵が掛けられていて、
 
 
トイレは朝晩の2回のみ。
 
風呂は一週間に1回のみ。
 
 
どんなに尿意や便意を催しても我慢。堪えられずに漏らすと罰が与えられる。
 
それは寝小便をしてしまった時と同様に、食事が薄い塩水になるという罰だった。
 
 
 
 
 
そんな生活の中、私の幸せは“母の笑顔”と“白いクマの縫いぐるみ”。
 
私が生まれる前に買ったらしい縫いぐるみだけが、与えられた唯一のオモチャで、お留守番をする時も寝る時も、ずっとずっと一緒に過ごしてきた大切な温もり。
 
 
そのクマとともに、いつも母の笑顔を求めていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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