君と一緒だから。 ,5 結局、仕入れた情報は“紅のは臭いが薄い”という、どーでもいいほど曖昧なものだけ。 やはりこんな話は人前でするものじゃないな…と、今日の自分について反省して床につく。 それに明日からお盆。 こんなくだらない事に頭を悩ませてる場合じゃないんだ。 「明日から離れ離れだね」 先にベッドに上がり母親のBL小説を読んでいた空が、寝る体勢に入った俺に合わせて本を閉じシーツに潜る。 そして至極残念そうに呟いたその空の言葉に、俺も少なからず胃がもたれるような不快感を覚えた。 「たった1週間だ。またすぐに会える」 …と、フォローはしてみたものの、お互いに気持ちが晴れることはない。 俺は東京の親元へ、空は両親と祖父母の元へ。毎年お盆から1週間は、お互いに家族と過ごすため会えない日が続く。 家族が嫌いかと言えば、それは違う。ただ少しばかり苦手なだけだ。 「瀬田は入宮さんと一緒だから心強い?」 「向こうじゃほとんど別々だ」 「そっか…」 じゃあみんなバラバラだね…と言って溜息をつく空は、すでに憔悴気味。慰めるように頭を撫でてやるが、そうする俺もすでに憔悴し始めている。 「「はぁ…」」 思わず重なった溜息に、お互い顔を見合わせて苦笑い。 “家族と過ごす事が苦痛” 俺と空が抱える共通の悩み。俺達が絆を深めるに至った、最大の悩みだ。 毎年やってくるこの時期は、いつも憂鬱で仕方がない。 [*前へ][次へ#] [戻る] |