君と一緒だから。 ,4 けれど、今日も補習で登校してみれば、男子校には息子さんをぶら下げた男共がわんさかといる。 あの疑問を思い出すなという方が無茶な話だ。 「なぁ紅、お前のアレはどんな臭いだ?」 「……………アレ……って、なに」 唐突にされた主語が代名詞になってしまった質問に、紅が訝しげに俺を睨み上げる。 空は「今日はトイレが近いなぁ」なんて年寄り臭いことを呟きながら、先程トイレへ向かったばかり。 下ネタを相談するには絶好の機会だと、声の大きい勝が紅の傍にいないタイミングを見計らい紅に尋ねた。 「だから……アレだ。…アレした時に出る白いやつ」 「……………」 紅の席の隣に立ったまま少し身を屈めて説明すると、ますます紅の顔が険しくなっていく。 すると聞こえていないと思っていた紅の前の席の黒崎が、ニヤニヤと下品な笑みを浮かべて振り向いた。 「ザーメンってことだろ?」 「……ああ、」 はっきりと俗な呼び名で答えた黒崎に、嫌だったが素直に頷く。 「紅のはしょっちゅう搾り取られてるから、色も臭いも薄いぞ」 「…………………………、は?」 「死ね、黒崎」 なんでそんな事知ってるんだとか、誰が搾り取ってるんだとか、臭い薄いのか…とか。 取りあえず俺の頭の中は訳の分からない疑問が飛び交い、ちょっぴりショート気味だ。 黒崎を罵る紅の態度から、なんとなく二人の間になにかあったんだと感じた俺は、 「俺に出来ることがあれば相談しろ」 と、珍しく紅に優しく声をかけて、さっさとその場を立ち去ろうと踵を返す。 その言葉は、紅に気遣うと言うよりも、これ以上関わって巻き込まれるのは御免だ…と、紅が俺に相談するはずがない事を見越した上でのものだった。 …のだが、 「なぁ瀬田、今度二人きりで話さねぇ?」 一歩目を踏み出す前に腕を掴まれ、黒崎に引き止められる。しかも、なにやら裏がありそうなお誘い付き。 「なんの話だ」 「ここじゃ言えねーな」 「なら無理だ。予定が詰まっていて、お前に時間をさく余裕はない」 「予定って、高井のお守り?」 「なんでも良いだろ、放せ」 「んじゃ、予定が空き次第よろしく」 どう考えても俺の頭には“黒崎の誘い=危険”と浮かび上がり、とてもじゃないが承諾なんて出来なかった。 必死で逃れようと抵抗するが、黒崎もまたしつこく食い下がる様子に、ますます警戒心が煽られる。 隣では紅が「黒崎、やめなって」と珍しく俺を庇うもんだから、余計に怪しい。 なんとか逃れはしたものの、しばらくは黒崎に近づかないでおこうと心に誓った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |