君と一緒だから。 ,3 今朝の出来事からずっと、俺の頭からは『イカ焼き』が離れてくれず、延々自分の精液の臭いについて考え込んでいる。 これを相談できる相手なんて、ちょっと関係のあった入宮しか有り得なくて。 「俺のアレって何の臭いだと思う?」 「アレ……とは?」 「……………せ………………精液、…だ」 「…………………………」 俺のその答えを聞いた入宮が、無言でテーブルにコップを置く。 そのコップの中には、カルピス。 どうして今日に限って朝からそんな物を飲んでいるのかと、たまたまとは言えタイミングを間違えたな…ともう飲まれる事はないだろうその白濁した飲み物を見つめる。 「さぁ、誰であっても特有の臭いだとは思いますが…。成雲のが何の臭いかと考えたことはないので分かりません」 「イカ焼きは、どうだ?…似てるか?」 「…………………………」 気を取り直してフォークを手にした入宮がプレートから取ったのは、シーフードサラダ。 フォークに刺さった輪切りの茹でたイカが、さりげなくプレートへ戻される。 「何か恨みでも?」 「わざとじゃない」 故意ではないとは言え、やはり食事時にする話じゃなかった…と、また食べられる事がなくなったイカを眺めて頭を下げた。 「そうそう、そう言えば今朝、瀬田と連れションする夢見ちゃった。なんか恥ずかしいねー」 胡桃パンとガーリックトーストのどっちにしようか悩み睨めっこしていた空が、やっと決まったらしくプレートを持ってくると、うふふ…と照れ臭そうに笑う。 そんな空の言葉に、俺達の間で今朝なにかがあったのだと察知した入宮が、ニヤリと嫌な笑みを浮かべた。 「詳しく聞きたいですね」 「誰が言うか、阿呆っ」 こうして俺のアレの臭いは何なんだ?と言う疑問は馬鹿馬鹿しくなり、俺は考えるのをやめた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |