君と一緒だから。 ,4 初めて見た空の顔は、女の子かと見紛うほど幼くて可愛らしい顔立ちだった。 中でも、透き通るように鮮やかな空色の瞳に、俺は思わず目を奪われていた。 「ぉ…」 「おい、お前達!何があったんだ!?」 大丈夫か、と声をかけようと口を開きかけた瞬間、担任が血相をかえて教室に飛び込んで来た。 すぐに血を流す空を見つけて、保健室へと連れていく。 「瀬田君も来なさい!」 おそらく西藤か、その仲間が先生に報告したのだろう。西藤を殴った俺も呼ばれ保健室へ向かった。 保健室では西藤が頬に氷水の袋をあてられていて、俺達が入室すると嫌々しい視線をこちらに投げ付けてきた。 西藤の仲間達は教室に帰され、空は左手に包帯を巻かれた。 それから場所を教員用の会議室に移され、一列に座らせられる。担任は机を挟んだ向かい側に腰掛けた。 「瀬田君、なんで西藤君を殴ったのか説明してもらえるかな?」 まず始めにされた問いに俺は唖然とした。 殴ったのは行き過ぎかもしれない。が、それを踏まえた上でも、殴った理由なんて空の左手を見れば一目瞭然。 それなのに、なぜ聞いてくるのか…、俺には理解の出来ない事だった。 「西藤が、高井の手を切って…」 「西藤君が?そんな筈ないだろう?」 仕方なく説明をすれば、担任は驚いた顔をして俺の答えを否定した。 「高井君の手は自分で切ったんだろう?どうして瀬田君はそんな嘘をつくんだい?」 「は…?なに、言って…」 「そうだよ、瀬田。なんで嘘つくんだよ、俺が何かしたか?」 「お前っ…カッターで切っただろ!自分がやったこと分かってるのか!?」 「だぁーから、俺は何にもしてないって」 「高井君、その傷は自分でやったんだよね?西藤君がやったんじゃないよね?」 「先生っ!」 俺がなんと言おうと、二人は気味の悪い笑みを張り付け、問答無用で話を進めた。 いくらなんでも、こんな怪我を負わされては空も黙っていないだろうと、自分の意見が聞き入れられない以上、あとは空の勇気にかけるしかないと一縷の望みを抱き、なかなか口を開かない空に目をやった。 「僕……、自分で、切りました…」 しかし、空は何の反論もせず、小さく頷いただけだった。 「ほら、高井君は自分でやったって言ってるじゃないか。もう理由はいいから、瀬田君は早く西藤君に謝って許してもらいなさい」 「そーだぞ!痛かったんだからな、早く謝れっ!」 西藤を疑いもせず空の言い分をあっさり認め、そして俺を責める担任。どこか違和感のあるやり取りだった。 無くならないイジメ、西藤をかばう担任。 ようやく、ずっと感じていた不快感の正体が分かった。 担任は、イジメの件で事を荒立てたくないんじゃない。何もなかった事にしようとしている。 空の敵は、西藤だけではなかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |