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君と一緒だから。
悪寒と黙と、ときどき奇声
 
 
 
とうとう俺達の番が回ってきてしまった。
 
 
 
「瀬田っ、て…手っ、離しちゃ駄目だよ!ちゃんと握っててねっ!」
 
「握ってる握ってる」
 
 
まだ明るい体育館から一歩も出てない内からパニック気味な俺。瀬田が苦笑いしながら繋いでいた手に力を込める。
 
出口に立つ先生が名簿にチェックを入れて、いざ、闇夜の悪魔がいざなう血と涙の恐怖体験ツアー(ただの肝試し)に出発っ!
 
 
 
 
 
―――…30秒後。
 
 
 
「ひぃーーん、帰りたいよーぅ」
 
「まだ校舎にも着いとらんだろ、阿呆」
 
「だってぇーっ、この道、怖いぃーっ!」
 
 
体育館から校舎のスタート地点までは、数メートル間隔に置かれた蝋燭の小さな灯だけが道しるべ。
 
あとは月明かりだけが気休め程度に辺りを照らし出している。ちょっと奥に目をやれば、木と木の間は漆黒の闇。不気味過ぎて目を離せらんない。
 
 
 
ザザザザザザーーッ!
 
 
「きゃあーっ!きゃー!いやぁーっ!!」
 
「落ち着け、風だ、風」
 
 
まだ始まってないんだから…と呆れて笑う瀬田は、お化け屋敷と変わらず怖がる様子は皆無。
 
なんでこの恐怖が分かんないの!?って憤然としつつも、でも瀬田まで怖がる人だったら俺が助けてもらえなくなっちゃうから強い人で良かった…なんて安心もする。
 
 
しっかり繋いだ手をちゃんと繋がってるかもう一度確認して、すでに涙の滲む目を前に向ける。
 
すると、もうすぐそこにスタート地点の第一校舎の玄関と、その前で狼男に扮した案内人の人が見えた。
 
 
 
 
 
可愛い子は食べちゃうぞぉー!ってなんだか面白い脅かし方をする狼さんに握手してもらった。
 
その狼さんに懐中電灯を二人で1つだけ受け取って、バイバイって手を振りあってお別れ。
 
 
ちょっぴり和んじゃった俺だけど、
 
 
 
「ぅ…っ……」
 
 
校舎に入って最初に眼前に伸びる廊下のほの暗さに、瞬時に足がすくんで立ち止まる。
 
 
 
「行くぞ」
 
「むむむむ無理ぃぃー」
 
「阿呆か、あとがつかえるだろ」
 
「やあぁーんっ」
 
 
いやいやと首を振って泣き顔で懇願してみても、瀬田はさっさと俺の手を引いて歩き出した。
 
俺の控えめな悲鳴が真っ暗な廊下の先で跳ね返って響いてくるその声が、より一層恐怖を掻き立てて堪らない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
最初の部屋は、保健室。
 
やっぱり森先生がいるのかなぁ…って、顔見知りの人だと思うと恐怖も少しだけ和らぐ。
 
とは言っても恐怖の割合の方が断然大きな俺には戸を開ける勇気なんてあるはずがなくて、強くて頼りがいのある瀬田の背中に隠れて開けられていく戸を見張った。
 
 
 
「いらっしゃいませー」
 
 
戸が開いてすぐ声をかけてきたのは、いつもと変わんない白衣姿で椅子に座って頬杖をついた退屈そうな森先生。
 
 
 
「なんだ、まんまじゃないか。ゾンビにくらい変装しないのか?」
 
「ん、まぁ、予算の問題で色々とな…。それより、体育館暑かっただろ?冷たいお茶あるから、そこ座って待ってな」
 
 
あまりに普段通り過ぎる先生の姿に、瀬田が若干つまらなさそうに近付く。俺も瀬田の背中に張り付いたまま歩み寄る。
 
瀬田にツッコまれた先生はバツが悪そうにヘヘッて笑って、椅子から立ち上がると近くの給仕コーナーへ。
 
 
俺と瀬田は拍子抜けしたまんま、先生に促されたベッドへ近寄る。
 
普段は開けられてるカーテンがぴったりと閉め切られてる事なんて、全く気付かないくらい俺は油断していた。
 
 
 
 
 
瀬田の手が触れるか触れないかって瞬間、
 
ジャーーッ!!と、いきなりカーテンが開け放たれて、
 
 
 
「グギャアアアアッ!!」
 
「ギャオオオオオゥ!!!」
 
 
全身の皮が擦り剥けた、凶悪な顔のゾンビ2匹がベッドから飛び出してきた。
 
 
 
「うきゃあぁああぁあああーーっ!!!」
 
 
驚き動転した俺は、瀬田から離れて保健室の出口へ走りだす。
 
 
 
「大丈夫か、高井っ!」
 
「っ、せん…」
 
 
あと一歩で出口って時、ガッと肩を掴まれて先生に引き止められた。
 
さっきの先生を覚えていた俺は、この際先生でも良いから助けてぇっ!て振り向いたら、そこに居たのは…
 
 
 
「っ―――――――!!!!!」
 
 
のっぺらぼうの先生。
 
 
 
「@☆□¥▽※◎☆△¥%◇※ーーっ!!!」
 
 
驚愕し過ぎた俺は、自分でも理解できない言葉を叫びながら今度こそ保健室を飛び出した。
 
 
 
 
 

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あきゅろす。
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