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君と一緒だから。
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遠足ももう明日と迫っていた。
 
 
 
「ねぇ、知ってる?」
 
「ぅおっっ!?」
 
 
俺は話し掛けられたくらいで跳び上がるようなビビりじゃない。
 
紅の奴、絶対狙いやがった…。
 
 
 
「あぁー、危ない危ない。危うくはみ出るとこだったね」
 
「………なんの用だ」
 
 
用を足して油断しているところに肩を叩かれ驚かされて、本当に便器から小便がはみ出そうだった。
 
それを紅の奴はニヤニヤ笑いやがって、かなりムカつく…。
 
 
こいつにしか見せないだろうってくらい最大級の睨みを効かせて紅に目を向けた。
 
 
 
「相変わらずデカイね」
 
「……、なんの用かと聞いてる」
 
 
けど紅は、わざわざ不機嫌な顔を精一杯表現してやったのに、飄々とした表情でフフンなんて鼻で笑う。
しかも、勝手に大事な息子見やがった。
 
…ムカつく。
 
本っ気で、ムカつく奴だ。
 
 
苛々しながら本題を促すと、紅は隣で用を足しながら話し始めた。
 
 
 
「先輩に聞いたんだけど、遠足で行く山の展望台の近くに連理木があるらしいよ。……あ、連理木って知ってる?」
 
「……知らん」
 
 
正直に答えたら、やっぱり鼻で笑う。いちいち嫌味ったらしい反応に、そろそろ胃に穴が開きそうだ。
 
 
 
「簡単に言うと、別々の枝とか木の節みたいな所が成長過程でくっついた木のことらしいんだけど。神社だと、よく縁結びとか夫婦和合なんかで縁起物にされてるんだって」
 
 
縁結び…
 
夫婦……いや、夫夫和合…。
 
 
 
「それが遠足の目的地にあるのか?」
 
「そう。そこのは別に縁起物で担がれてるわけじゃないけど、マニアの間じゃ結構評判らしいよ」
 
 
そんな物のマニアがいるのかは疑問だが。その連理木とか言う木、
 
…空が聞いたら絶対喜ぶ!
 
 
 
「展望台からどの辺りにあるんだ」
 
「行けばすぐ分かるんだって」
 
「そうか」
 
 
聞きたい情報も無くなったところで、用も足し終えていたから流しに向かう。
 
 
早く空に教えてやろう。
 
そう浮かれていた矢先、
 
 
 
「瀬田、お礼は?」
 
 
また隣の流しに来た紅が言った。
 
 
紅にお礼?
…ふざけるのも大概にしろ。
 
 
 
「まぁ、俺から言っても構わないなら良いんだけどぉー…」
 
 
憮然として答えずにいたら、そんな事を言い出しやがった。
 
 
 
「きっと感謝されるだろうなぁ。ほっぺにキスくらいしてくれるかも」
 
「待て」
 
「じゃ、頭下げて『紅様ありがとうございます』って言って」
 
「………」
 
 
…無理だ。
 
例え地球が回転を止めようが、彗星の衝突で爆発しようが、無理なものは無理だ。
 
 
 
「あっ、やっぱりトイレにいたー!もぉ、なかなか戻ってこないから心配したんだよ?」
 
 
しばらく黙って葛藤していると、その渦中の人物がやって来た。
 
 
 
「ごめん空、もう戻るとこだったんだ。あ、遠足で行く展望台のそばに縁結びの木があるらしいんだけど、知ってる?」
 
「おい、紅っ!」
 
 
確かにお礼は言ってなかったが、あっさり裏切りやがった紅に声を荒げると、紅は口端を上げて嫌味ったらしい笑みを浮かべる。
 
ムカつくっ!!
 
歯ぎしりしそうな衝動を必死で押さえ込んで睨むだけに留めていると、空が紅の質問に答えた。
 
 
 
「知ってるよ。連理木って言うやつだよね?前に入宮さんに連れてってもらったことあるもん」
 
「「………」」
 
 
まさかの返答に、紅まで言葉を失った。
 
と言うか、そんな所に一体いつ入宮と出掛けてたんだ?
 
 
この場合、
 
…入宮恐るべし…、となるのか?
 
 
 
 
 

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