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君と一緒だから。
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「あの…」
 
 
…と、やや気まずげに口を挟んだのは、リビングと廊下を繋ぐ扉から覗き込む瀬田。
 
 
 
「瀬田くんっ!まさか聞いてた!?」
 
「あっ、いや…、その…」
 
 
えっと……、なんて瀬田らしくない弱気でハッキリしない返事ばかり呟きながら、チラリと向けられた瀬田の視線。
 
俺達三人もその視線に気付いて、同じ方へ顔を向ける。
 
 
壁の時計が、ヤバい時間を指していた。
 
 
 
「ぅっ…、うわぁあああーーっっ!!!」
 
 
最初に我に返ったのは父さん。見事な雄叫びを上げて立ち上がる。
 
 
 
「遅刻だ!遅刻ぅっ!!もうバス間に合わないよぉー!今日は朝から会議があるのにぃっ!!」
 
「お父さん鞄っ!!急いでっ!走って!」
 
 
母さんも慌てて父さんに鞄を掴ませ玄関へ向かうべく、瀬田が立つ扉へと押し寄せる。
 
 
 
「おじさん、車呼んでおいたので使って下ださい!」
 
「「えっ!?」」
 
「もう表に来てるので。車なら間に合いますよね?」
 
「「……………」」
 
 
キョトンとして立ち止まった二人に、瀬田が爽やかに微笑む。
 
何て気の回る素敵な人……、なんて俺はちょっぴり感動してみたり。
 
 
 
ガシッ!
 
 
「うっ…」
 
「天使っっ!!」
「神様ぁっ!!」
 
 
素敵な瀬田に感動したのは俺だけじゃなかったらしい。
 
思い切り二人から熱い抱擁をされた瀬田は迷惑そうだけど、縋り付き奉り上げられた瀬田達は何となくほほえましい光景だ。
 
 
 
「あの、だから、遅刻…」
 
「はっ…、そうだった!瀬田くん、本当に感謝してるよ!必ずお礼するからねっ!」
 
 
慌ただしく靴を履きながら感謝を述べて、玄関扉に手をかけると振り向いて「でもね…」とワントーン落とした声で続けた。
 
 
 
「空を泣かせるような事したら、末代まで呪っちゃうよ…、良いね?」
 
「………はい、肝に命じておきます…」
 
 
おどろおどろしく脅し文句を投げ付けた父さんに、瀬田が引き攣った苦笑を浮かべながら頷く。
 
瀬田の返事に納得したのか、いってきます!と父さんは明るく言うと、母さんに投げキッスをお見舞いして出掛けて行った。
 
 
 
「………俺達も行くぞ」
 
「あ…、うん」
 
 
嵐が去った後のように静かになった玄関で立ち尽くしていた俺達も、我に返った瀬田に促されて活動を始めた。
 
 
 
「二人共、いってらっしゃい。テスト頑張ってね!」
 
「「いってきます」」
 
 
ガッツポーズを掲げる母さんに見送られて、俺達も家を出た。
 
 
 
 
 

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