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君と一緒だから。
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「まあまあ、そんな目に遭うとは限らないでしょ?」
 
 
騒ぎ立てる俺達に、母さんが冷静に言葉を挟んだ。
 
 
 
「それはあくまでお父さんの経験なんだから。痛いなら痛い、怖いなら怖い。ちゃんと伝えれば、瀬田くんは焦らず待ってくれる子よ。そうでしょう、空?」
 
「うん」
 
 
昨日だって、待つから、って言ってくれてたし。
 
ちょっと冷静に考えたら少し安心した。あっさり涙もひいて、意地悪なこと言った父さんを突き放す。
 
 
 
「ただ、何にも知らないままじゃあね…」
 
 
どうしよっかな…、ってブツブツ呟きながら、母さんが顎に手を当てて考え込む。
 
 
しばらくするて、よし!と、顔を上げた。
 
 
 
「母さんの小説読みなさい!」
 
「へ…?」
 
 
そこでなんで母さんの小説?
 
って、急な話の展開に首を傾げると、母さんがフッフッフと不敵な笑みを浮かべた。
 
 
 
「何を隠そう、母さんはBL小説作家なのよ!」
 
「ビー…エル…??」
 
 
知らない単語にまた首を傾げると、チッチッて人差し指を立てて舌を鳴らした。
 
 
 
「ボーイズラブ。つまり同性愛なんだけど、男の子同士の恋愛ってとこかしら」
 
「俺達…みたいな?」
 
「そう」
 
 
…えっと、つまり、
 
 
 
「母さんって、男の子同士の恋愛の小説作家だったの?」
 
「そゆこと」
 
「童話作家って言うのは?」
 
「それは表の顔、みたいな?」
 
「うそぉーー…」
 
 
全然気付かなかった。
 
 
バイの父親に、BL小説作家の母親。
女の子みたいだって馬鹿にされて、虐められて、結局男の瀬田が好きになっちゃって…。
 
それってみんな、この両親のせい?
 
 
生まれて15年。
ようやく気付いた両親の本当の姿に驚愕。
 
…俺、鈍過ぎ?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ドッサリと枕元に積まれた文庫本。
 
母さんから渡された母さん作のBL小説。
 
 
 
『所詮作り話だけど、何をするのかくらいは分かるから。これ読んで勉強しなさい』
 
 
という母さんの配慮のもと、これを毎晩読んでいかなきゃいけなくなった。
 
本を読むのは嫌いじゃないけど、そんなの内容次第だ。
 
 
ベッドのランプを点け、一番上の一冊を手に取る。
 
 
全体的に桃色な表紙のイラストには、高校か大学生って感じの男の子が二人。
 
金髪の幼い顔の子と、黒髪のカッコイイ子。どっかで見たような取り合わせ…だけど、きっと気の性だ。
 
 

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