君と一緒だから。 ,4 「まあまあ、そんな目に遭うとは限らないでしょ?」 騒ぎ立てる俺達に、母さんが冷静に言葉を挟んだ。 「それはあくまでお父さんの経験なんだから。痛いなら痛い、怖いなら怖い。ちゃんと伝えれば、瀬田くんは焦らず待ってくれる子よ。そうでしょう、空?」 「うん」 昨日だって、待つから、って言ってくれてたし。 ちょっと冷静に考えたら少し安心した。あっさり涙もひいて、意地悪なこと言った父さんを突き放す。 「ただ、何にも知らないままじゃあね…」 どうしよっかな…、ってブツブツ呟きながら、母さんが顎に手を当てて考え込む。 しばらくするて、よし!と、顔を上げた。 「母さんの小説読みなさい!」 「へ…?」 そこでなんで母さんの小説? って、急な話の展開に首を傾げると、母さんがフッフッフと不敵な笑みを浮かべた。 「何を隠そう、母さんはBL小説作家なのよ!」 「ビー…エル…??」 知らない単語にまた首を傾げると、チッチッて人差し指を立てて舌を鳴らした。 「ボーイズラブ。つまり同性愛なんだけど、男の子同士の恋愛ってとこかしら」 「俺達…みたいな?」 「そう」 …えっと、つまり、 「母さんって、男の子同士の恋愛の小説作家だったの?」 「そゆこと」 「童話作家って言うのは?」 「それは表の顔、みたいな?」 「うそぉーー…」 全然気付かなかった。 バイの父親に、BL小説作家の母親。 女の子みたいだって馬鹿にされて、虐められて、結局男の瀬田が好きになっちゃって…。 それってみんな、この両親のせい? 生まれて15年。 ようやく気付いた両親の本当の姿に驚愕。 …俺、鈍過ぎ? ドッサリと枕元に積まれた文庫本。 母さんから渡された母さん作のBL小説。 『所詮作り話だけど、何をするのかくらいは分かるから。これ読んで勉強しなさい』 という母さんの配慮のもと、これを毎晩読んでいかなきゃいけなくなった。 本を読むのは嫌いじゃないけど、そんなの内容次第だ。 ベッドのランプを点け、一番上の一冊を手に取る。 全体的に桃色な表紙のイラストには、高校か大学生って感じの男の子が二人。 金髪の幼い顔の子と、黒髪のカッコイイ子。どっかで見たような取り合わせ…だけど、きっと気の性だ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |