星の契り
◆それでも、また花は咲く
「ここまで普通に生活出来たのが奇跡ですね」
「残念ですが…もう2ヶ月も持たないと思います」
あいつは、一体いつから、底の無い恐怖に怯えていたんだろう。
俺は、この時はまだ、何も知らなかったんだ。
そう。なにも。
――――――――――
あれはたしか、5月の半ば頃…
梅雨が始まったわけでもいないのに、5日間ずっと雨が降り続いていた夕方だった。
「あれ…あいつ、ってたしか…」
学校帰り、薄暗い公園で、傘もささずにベンチに座って遠くを見つめる青年(と言うには少し幼い顔をしているが)を見つけた。
たしか同じ学年の奴だ。
何をするでもなく、ただ遠くを眺めている。
なんだか、怖かった。
何処か見えないところに
消えてしまいそうで。
近くに駆け寄って傘に入れた。そいつはよほど驚いたらしく、目をこれでもかというほど見開いた。
「えっと、お前同じ学年だよな?こんなとこで濡れてっと風邪引くぞ?」
俺がそう言うと、悲しそうに顔を歪めた。
「――…んだ…」
「え?」
「もう、いいんだ…」
小さく小さく呟き、自嘲するような笑みを浮かべた。
「よくねぇだろ!!!」
思わず叫んでしまった。
まるで、全てを諦めたみたいな顔をするから…
目の前のやつは、いきなり大声を出した俺にびっくりして、黙りこんでしまった。
「…悪い。大声出して。何があったか知らないけど、取りあえず家帰ろう。送ってくから」
俯いて顔を上げようとしないそいつを見て、大声出したせいで泣いてしまったんじゃないかと思って焦った。
「お、怒ったわけじゃねえぞ?いや、怒ったっちゃ怒ったけど…いきなりはびっくりするよな。うん、俺が悪かった。な?ごめんな」
肩に手を置くと、妙に大きく上下している気がした。
不安になり、顔を覗き込むと、眉を寄せて苦しそうな顔をしていた。
今度は俺が驚いているといよいよ呼吸が激しくなり、背中を丸めて胸のあたりのシャツをわしづかんだ。
「ヒュ、ケホッ…は…ぅ、あ、はぁっ、はっ」
目の前で何が起きてるか理解出来なかったが、そいつの頬が赤かったので、額に手を置くと、案の定熱かった。
「お前、酷い熱じゃねぇか!!取りあえずうちに来い。すぐ近くだから」
背中を擦りながら、少し落ち着くのを待って、呼吸も大分落ち着いた頃、そいつに傘を持たせて背中を向けてしゃがんだ。
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