星の契り
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その後、落ち着いた頃に、ひとりの看護師が来て、俺に「星夜くんから」と短冊と一通の手紙をもらった。
短冊には
『大翔が、誰よりも、幸せでありますように』
と書かれていた。
やめてくれよ。また止まらなくなるじゃないか。
――――――――――
それからはあっという間だった。
通夜でも葬式でも、俺はみっともなく泣いたりしなかった。
火葬中、一人会場を抜け出して、火葬場の壁際に適当に座ってぼうっと空へ上る煙を見上げていた。
火葬が終わり、骨を拾う時、星夜の両親にお願いして骨を分けてもらった。
左手のあたりに転がっていた小さな銀色も、俺の持つ小さな瓶に入れた。
カラン、と小さな音がした。
――――――――――
次の日、お世話になった病院へ行くと、患者さん達の短冊で綺麗に彩られた笹を燃やす準備をしていたので、何故燃やしてしまうのか、近くの看護師に聞いてみた。
「願いが空の織り姫と彦星に届くように、燃やすんだよ」
煙は上に昇って行くでしょう?
と教えてもらった。
その看護師に俺と星夜の短冊もお願いしますと頼むと、心良く受け取ってくれた。
外にあるベンチに座り、小さな瓶を隣に置くと、俺はポケットから手紙を取り出して読んだ。
燃やす作業が始まったのか、空へと煙が伸びていた。
『笹倉 大翔様
初めての手紙が最後の手紙になってしまうことを許して下さい。
情けない事に、もう字が書けないので、この手紙は看護師さんに書いてもらっています。
まず、最期まで一緒にいてくれてありがとう。本当に幸せでした。今も幸せです。
まだまだ沢山やりたい事とかあったんだけど、おれの体は待ってくれないみたいです。
えっとね、もし、おれが病気でもなんでもなくて、元気で、大翔と一緒にいれて、幸せな毎日をこれからも送れるとしたら、
まずは大翔の家に遊びに行きたいなぁ。
二人で遊園地も行きたいし、山登りもしたい。
旅行に行ったり、海にも行きたい。
二人で学校に行って、一緒に卒業したかったなぁ。
他にも沢山あるんだけど、書いたらきりがないから、、、
大翔のこれからの人生に、おれが隣に居れない事が悔しいけど、そんなこと言ってたってしょうがないよね。
大翔はこれから、大翔の人生を、精一杯歩んで下さい。
ちょっと、、、随分、かな。
早めのお別れになっちゃうけど。
だいすきでした。
幸せになって下さい。誰よりも。
ほんとはね、今も、きっと死んじゃってもだいすきだよ。
けどね。大翔はこれから先、大切な人を見つけて、結婚して、子供なんかも作って、幸せな家庭を作っていくんだから。
、、、だから、だいすきでした。
おれの最初で最後のお願い、聞いてね。
誰より、おれより、幸せになって。
それこそ世界で一番って言えるくらい。
最高のお嫁さん見つけて、
最高のお父さんになって下さい。
それがおれの願いです。
神様も、この願い事なら、聞いてくれると思うんだ。
おれ、大翔との約束、守ったんだから。
最期まで精一杯生きるって。
大翔もおれの願い、叶えてみせてね。
それを、おれからの約束にするよ。
いつも、いつまでも
見守っています。
おれをがっかりさせるような人生送るなよ!!
では、お元気で、、、
誰よりも、愛していました。
月島 星夜』
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