小説1-V
第一節
ここは、レイ達の故郷の村から北東に位置する町である。
ある民家で、ある男と女が庭の池に泳ぐ鯉を眺めていた。
「いつ見ても綺麗な鯉ですわ。」
彼女の名はフロール。
セントラルランドの旧王国時代の元王女である。
1年前のオムニキューブ事件の時に、当時の国王の臣下に殺されそうになったところを、クロウに助けられた。
今はクロウの家に居候している。
ふと、横のクロウが話し始めた。
「また、アイツらが旅に出たようだな。」
「…もしかしてレイ様達のことですか?」
「そうだ…出かけるぞ。」
「え? ちょ、クロウ様!?」
「フロール、支度をしろ。」
「わ、わかりましたわ。」
突然のことに慌てるフロールだったが、小走りに自室へ向かう。
「少々待っていてくださいね。すぐに着替えますので。」
「ああ。」
数十分後――
淡白な色合いの衣装に身を包んだフロールがやってきた。
「お待たせしました!! いかがでしょうか?」
「ああ、似合ってる似合ってる。行こう。」
「せめてこっちを向いて言ってください!!」
クロウとフロールは、両親の“いってらっしゃい”の声を背に、出発した。
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