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小説1-V
第十節
「…二つ縛りに、白い髪。そして魔道書…。ロルの手下がバートに何の用ですかぁ?」

イツェイルが挑発気味に何と言おうと、その少女は答えなかった。

"数多ナル夜這い星 帯ヲ纏イテ 蠢キヲ縛ラン"

少女の詠唱とともに、筋を纏った光がイツェイルをレンガの壁に縛りつけた。

「…かわいいですねえ。磔(ハリツケ)だけで私を負かしたとでも?」

イツェイルは血を流しながらも腕に力を入れ、光の拘束を打ち破ろうとしたが、破るどころか拘束力は徐々に増していった。

"光リ合ウ玉鬘 影ニ内入リ留マリテ貫キ乱レ 行キ別ラン"

少女の詠唱で現れた鋭い光の筋は、縛りつけられ、もがくイツェイルの腹の中に刺さった。

そしてその光はイツェイルの体の外に向かって方々に弾け散った。

一瞬間を開け、光の飛び出て行った全身の傷口から、血が噴き出し、イツェイルは息絶えた。

少女は片手で本をパタンと閉じると、イツェイルの持っていた荷袋をさも重そうに背負った。

「"コレ"を、バート卿に渡すわけにはいかない。ネイレール様に返させてもらう。」

そう言って少女はバート城を去った。

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あきゅろす。
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