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小説1-V
第九節
バート城付近――



足を引きずり、片腕を抑えながらようやく薄明かりに照らされた壁のレンガが見えてきた。

この雑木林を抜ければ無事バート城に帰還だ。

腰に差す長い刀が重く感じる。

こんな感覚は初めてだ。

ここまで重傷を負ったことも。

男は背中を城の壁にもたれると、"ふう"と一息吐いた。

「…属性の力、侮れ…ませんねえ…。」

相変わらず、頭から流れる血が目に入り、視界をぼやけさせる。

先のレイとの戦いでの最後の攻撃で放たれた光は、イツェイルの刀の刀身の"闇"を抑え込み、溢れた力はイツェイルの身体を刻むようにほとばしった。

「…この傷の具合…、まるで私が…私自身を、斬りつけたよう、ですねえ…。」

だが、レイもイツェイルの最後の攻撃で、同様に全身がボロボロになった。

お互いとも生きているのが不思議なくらいだ。

イツェイルがふと、自分の来た雑木林の方に目を向けると、こちらに歩いてくる人影が見えた。

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あきゅろす。
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